「心の師とはなるとも、
心を師とせざれ」御聖訓。
障魔に紛動されない
確固たる自己を築こう!
これが人生勝利の真髄だ。
(新1481・全1088)
崇峻天皇御書 P1174
『一代の肝心は法華経法華経の修行の肝心は不軽品にて候なり、不軽菩薩の人を敬いしはいかなる事ぞ教主釈尊の出世の本懐は人の振舞にて候けるぞ、穴賢穴賢、賢きを人と云いはかなきを畜といふ』
【通解】
釈迦一代の説法の肝心は法華経である。そして、法華経の修行という点で、その肝心をいえば、それは不軽品である。不軽菩薩が人ごとに敬ったということは、どういうことをいうのであろうか。教主釈尊の出世の本懐は、人として振る舞う道を説くことであった。穴賢穴賢。振舞いにおいて、賢いものを人といい、愚かなものを畜生というのである。
【先生の指導から】
家庭をつつがなく守りぬいていくためにも、職場において自らの力量をぞんぶんに発揮していくためにも、まず自在の活躍をしていくための基礎となる身体を、強靱に鍛えぬき、生命力を満々とたたえていくことが肝要である。
そこにこそ"人間それ自体"を一切の原点にすえ、仏法の極理、真髄を昇華させゆく、もっとも基本的なあり方がある。
法華経方便品には「是の法は法位に住して、世間の相常住なり」とある。これは「信心即生活」「仏法即社会」の原理を示したものである。
内面に脈打つ清冽な信仰の奔流を、社会という現象次元にいかに発現させていくかが、仏教という人間宗教の本来の使命であり、目的でもある。
そのためにも「賢きを人と云いはかなきを畜といふ」との御文どおり、偏狭を排しつつ、油断を戒め合いながら、あくまでも賢明にして自在闊達の人生道を悠々と歩みぬいていってほしい。
ゆえに、信仰しているからなんとかなるにちがいないと考えるのは、慢心であり、正信こそ、最高の良識であることを銘記されたい。
名字の言 希望輝く光の方へ心を向けて 2022年7月31日
ルソーの教育小説『エミール』に、こんな趣旨の記述がある。子どもは横方向から光が差すと、そちらを見る。その際、顔を光の方へ向けさせないと斜めに物を見る習慣がつく。また、暗闇に慣れさせないと、いざ暗い所に置かれたら泣き叫ぶ、と▼これは身体的な話だが、それを"心構え"に置き換えることもできよう。希望輝く光の方へ心が向かないと卑屈になる。未来が暗い影に閉ざされるほどの試練にも耐える力を養うことが大事だ——と▼実家から上京し、就職した男子部員は、コロナ禍の影響で2度の失職。無理がたたって体調も崩し、全てを悲観していた。そんな時、池田先生の書籍に、先師・牧口先生の言葉を見つけた▼「人生、あきらめなくてすむことが、たった一つある。それが信心である」。心に勇気の光が差し込んだ。彼は奮起し、信心と真っすぐに向き合って、再就職と健康を勝ち取った▼光に背を向けているうちは、足元から伸びる暗い影ばかりに目がいく。だが、光の方へ向き直れば、自分の前に影はない。創価の友にとって、最大の光は「信心」である。その後、彼の父親は、わが子の成長ぶりに驚き、喜んで入会した。今や、彼自身が光り輝く存在となり、明るい幸の裾野を広げている。
寸鉄 2022年7月31日
「父母の成仏は、即ち子の成仏」御聖訓。親の成長が未来開く。後継の手本に(新1130・全813)
心の眼磨くのが信心を基調とした教学—戸田先生 求道の心で研鑽の日々を
隠れた所に咲く花は何と美しい事か—詩人キーツ。陰の労苦が幸の大輪育む土壌
不規則な生活で熱中症のリスクが増加—医師。聡明なリズム刻み健康人生
旧友への久々の連絡。相手の喜びは想像より大—研究。友情に勝る宝なし
☆Switch——共育のまなざし 未来部と任用試験
◇「育む」ことは「思い出をつくる」こと
「試験」という言葉の響き。中学・高校生だった頃に、学校で受けたテストの"大変だった"記憶を思い起こしませんか? それがなぜか「教学試験」だと、"楽しかった"思い出がよみがえる——今回訪ねたのは、そんな未来部員や担当者がいる新潟・上越北圏です。
◇教学って何?
今月から「教学部任用試験(仏法入門)」の申し込みが始まりました。コロナ禍の影響もあって、実に4年ぶりの実施となります。
上越平和会館に集った女子高等部員の中には「中学時代に受けました」と懐かしそうに振り返る友も。未来部担当者の一人が「勉強してみて、どうだった?」と尋ねると、「そもそも『教学って何?』っていうところから始まって……正直、学んだことを全部覚えてはいないんですけど、勉強会でみんなとおしゃべりしたこととか、一緒に受験した同級生と仲良くなったこととかは、よく覚えているんですよね」と笑います。
「分かるー!」と、総新潟女子未来部長の金子薫さんが合いの手を入れました。「私は高校1年の時に受けたんだけど……その時はまだ、信心している自覚もなかったの」
当時、家族の中で信心に励んでいたのは母のイツ子さん(地区女性部長)、ただ一人。父・信幸さんは未入会で、「君(イツ子さん)がやる分には構わないよ」というスタンスだったそうです。
女子未来部担当者が「薫ちゃん。今度、任用試験っていうのがあるんだけど……」と自宅まで訪ねてくれた時、薫さん自身が挑戦を決意し、さらに信幸さんも娘の受験を承諾してくれたのは、母の人知れず重ねてきた祈りが通じたからかもしれません。
当の薫さんはというと「別に教学を勉強したいと思ったわけじゃなくて(苦笑い)」。関わってくれた女子部(当時)のお姉さんがいつも明るくて優しくて、たくさん褒めてくれて、「その人柄に引かれたから」だといいます。
薫さんが理解しやすいように、創意工夫を重ねてくれたのでしょう。法華経で地涌の菩薩が登場する場面を"おとぎ話"のように楽しく表現してくれたり、生命の状態・境涯を10種に分類した「十界論」を説明した後で、勉強会の終了後にお菓子やジュースを一緒に味わいながら「これは、まさに『天界』(努力の結果、欲望が満たされた時に感じる喜びの境涯)だねえ!」と、ユーモアを交えて話してくれたり。
「『教学を教えてあげよう』みたいな姿勢では全然なくて……『楽しい思い出をつくってあげたい』っていう真心が伝わってくる勉強会でした」。そう薫さんは振り返ります。
薫さんが任用試験に合格した時の、その先輩の喜びようは言うまでもありません。
「『喜』とは、自他共に喜ぶことなり」「自他共に智慧と慈悲と有るを、『喜』とは云うなり」(新1061・全761)——この御聖訓のままの温かな世界が、そこにはありました。
◇哲学好きの父
薫さんはその後、新潟の短期大学に進学。1人暮らしを始め、「任用試験を通して大好きになったあの先輩と一緒に信心がしたい」と、自ら御本尊を受持したのです。
卒業後、地元の上越市に戻って保育士に。女子部の活動にも積極的に取り組むようになりました。
父・信幸さんとの日常にも変化が生まれます。家の中で"哲学談議"を交わすようになったのです。信幸さんは、もともと大の哲学好き・読書好き。生まれは岐阜・郡上市です。仏教行事が盛んな地域で育った影響もあって、若い頃から諸宗派の教義を独学。洋の東西を問わず、思想書も次々と読破してきたそうです。
そんなお父さんですから、娘の切り出す「本当の仏教っていうのはね……」との話にも、そう簡単に納得した顔は見せません。しかし1年、2年、3年と学会活動を生き生きと重ね、青年部教学試験も3級、2級、1級と合格していく薫さんの成長の姿に、少しずつ、感じるものがあったのでしょう。ついに2015年、学会に入会したのです。
「婦人部(当時)の方まで、わざわざ話に来てくださってね。学会の人たちの一生懸命さと誠実さに胸を打たれたというか、根負けしたというか(笑い)」(信幸さん)
哲学者である父の心を動かしたのは理論でも理屈でもなく、信仰の歓喜ゆえに自然と現れる「人の振る舞い」(新1597・全1174)だったのかもしれません。
一方の薫さん自身、信心のみずみずしい息吹を持ち続けてこられたのは「未来部員と一緒に、任用試験を通して学び合うことができたおかげ」と言います。
勉強会を担当するたび思い返したのは、お世話になった先輩の姿でした。"今度は自分が、あの人のように"と。
上越北圏女子未来部長を務めていた時、任用試験の内容を共に学んだ高校1年生がいました。岡沢実樹さん。現在の同圏女子未来部長です。
◇郷里のために
どうして任用試験を受けるのか。そう未来部員から聞かれた時、岡沢さんは自身の経験を踏まえて、こう答えるそうです。「なぜ信心をするのか。どうして親は学会活動を頑張っているのか。その答えがきっと見つかるよ」と。
薫さんと一緒に研さんの汗を流した高校時代の、あの日あの時。仏法の教義や創価三代会長の歴史を学ぶことで、「そうだったのか」と得心することは、もちろんありました。けれどそれ以上に、みんなと学び合うことで生まれる楽しさや、先輩から励ましてもらった時の喜びを通して、「ああ、この"温かな創価家族の世界"を広げるために、みんな学会活動をしているんだ」と、自然と胸に込み上げるものがあったと言います。
「こんな素敵な世界を築いた池田先生のことを、もっと知りたい」。岡沢さんは創価女子短期大学へ進学。卒業後は「郷里のために」とUターン就職を決めたのです。
上越北圏の未来部リーダーたちには、実感していることがあります。「私たちが未来部員に教学を教えているようで、実は私たちの方が学ばせてもらっているんだ」
世代も感性も言葉の感覚も違う未来部員に、教学を説明するのは、簡単なことではないかもしれません。けれど、そこで「どうすれば楽しく分かりやすく、学んでもらえるか」と祈りを重ね、知恵と言葉を尽くす中で、新しい「伝え方」「表現の仕方」が生まれます。
何より、任用試験の勉強を通して「私にも仏界があるんだ!」「使命があるんだ!」と純粋に感動を覚える未来部員の姿に触れて、「教学の知識をたくさん知っていることよりも、教学を学ぶ喜びにあふれているかどうか——これが一番大事なことなんだ」と気付かされると言います。
勉強会では素っ気ない対応しかしてくれなかった女子未来部員が、任用試験を終えた後、「これ、教えてくれたお礼に」と、得意の裁縫でつくったティッシュケースを笑顔で薫さんにプレゼントしてくれたこともありました。
「思い出を築いてもらっているのも、やっぱり私たち担当者の方なんですよね」
◇挑戦しよう!
任用試験特集号である「大白蓮華」8月号に掲載された連載「世界を照らす太陽の仏法」の中で、池田先生は今秋の任用試験に挑戦する友に、こうエールを送っています。
「至高の生命の法理を学ぶことは、歓喜があり、必ず大きな人生の転機となる。そして、学んでいく人も、教えてくれる人も皆共に、栄光凱歌の人間学の博士となっていくのです」「さあ、人生の羅針盤たる仏法を、木陰で涼風に吹かれながら語らうように、心広々と学んでいきましょう」
迎えた未来部躍進月間。薫さんも岡沢さんも、地域の未来部員たちに「挑戦してみよう!」と呼び掛けています。後継の宝を「育む」ことは、信心の「思い出をつくる」ことと確信して——。
そうそう。薫さん自身も、挑戦していることがあるようです。それは2015年に入会した父・信幸さんに、任用試験を受けてもらうこと。
その話を愛娘から持ち掛けられた"哲学好き・読書好き"の父は、司馬遼太郎の代表作『坂の上の雲』が収められた分厚い全集3冊をドンとテーブルの上に出し、にっこり笑って一言、放ったそうです。「薫も、この本の読了に挑戦してほしいな」
共に学び、共に育つ、熱い夏が始まりました。