◇今週のことば
さあ、春の太陽と共に!
爽やかな「挨拶」
明るい「笑顔」
誠実な「振る舞い」で
友情と信頼の花の輪を!
2021年3月29日
三三蔵祈雨事 P1472
『鎌倉より事故なく御下りの由承り候いてうれしさ申す計りなし』
【通解】
鎌倉より事故なく御帰国の由をお聞きして、嬉しさはもうしあげようもない。
名字の言 志村けんさんが「ホロッとした」手紙 2021年3月29日
人気を博したコント番組「志村けんのだいじょうぶだぁ」の放映時、テレビ局には視聴者から多くの便りが届いた。その中に、志村さんが「ホロッとした」手紙があった▼父を失った娘が、母とアパートで生活していた。母はパートに出て、娘もアルバイトの日々。ただ、月曜日だけは2人とも午後6時に家に帰った。8時からの番組を見るためだ。母娘で笑い合い、「また1週間頑張ろうね」と声を掛け合った▼人間と動物の違いの一つは「笑う」こと。志村さんは「笑いには、人間を強くする不思議な力がある。お笑いしかできない僕だけど、笑うことで何か明るい光が見えてくれば、本当にいいんだけどね」と語っていた(『志村けん160の言葉』青志社)▼笑いは人間を元気にする"生活の潤滑油"である。カントは"笑いは医師の働きをする"と洞察したが、実際、免疫機能の活性化や癒やしの効果があるという。笑いの類型であるユーモアも、"人間を解放する笑い"といわれる。池田先生は、たくましき楽観主義からにじみ出るものがユーモアであり、「真剣の人は明るい」と▼志村さんが逝去して一年。コロナ禍は続き、社会の分断も深刻だ。だからこそ、苦難に負けない人生を笑顔でたたえ合う励ましの輪を、地域に広げたい。(嶺)
寸鉄 2021年3月29日
「かくれたる事のあらはれたる徳となり」御書。陰の労苦に陽報は燦々と
東京・目黒の日。師弟有縁の地に勇者の連帯。動き、語り、勝利の突破口開け
男子部・学生部が大拡大期間を力走!先駆の幹部に友は続く。雄弁の将に
充電しつつ長時間の動画再生で携帯が発熱。事故多発。利用は十分注意し
公明は子ども・子育て支援を主導—識者。衆望に応える政策実現に死力を
〈社説〉 2021・3・29 壁に挑んだ新社会人へ
◇自ら希望つくる人に勝利が
春本番! 新社会人となる友は、新型コロナウイルスの感染拡大による激動の一年を乗り越え、新たな人生の出発の時を迎えた。大学等では振り返ると授業や就職活動は主にオンラインとなり、クラブ活動やアルバイトも影響を受けた。青春を謳歌するはずのキャンパスライフは一転、先行きの見えないものとなった。
文部科学省によると、新型コロナの影響で昨年4〜12月に全国の国公私立大や短大などを中退した学生は、計1367人に上る。理由として経済苦をはじめ、「オンライン授業で友達がつくれず寂しい」「孤独感を覚えた」などが挙げられている。
とりわけ、就活生はなかなか進路が決まらず、不安に押しつぶされそうな日々を、悩み葛藤しながら奮闘してきたことだろう。2月1日現在の就職内定率は89・5%。2011年以来、10年ぶりに悪化した。痛手だったのは、先輩や同期生、就職キャリアセンターの職員らとの対面コミュニケーションが取りづらくなったことだ。普段であれば当たり前にできていた情報交換や人脈づくりが困難となった。
こうした苦境の中、学生部員たちは互いに励ましを送り、立ちはだかる人生の絶壁に挑んでいった。千葉県の男子学生部員は、自身の夢をかなえるため、難関の公務員試験に挑戦。しかし突然、父親を襲った病魔に一時は心が折れそうに。池田先生の言葉、家族やオンラインでの友人からの励ましに奮起。「師匠に勝利をご報告したい。家族に勇気を送りたい」と猛勉強の末、見事合格を果たし、新たな一歩を踏み出した。
また、東京都の女子学生部員は、慣れないオンライン面接に懸命に挑むも、届くのは不採用の通知ばかり。それでも"使命の進路を開くのだ"と題目をあげると、不思議と生命力と諦めない勇気が湧いた。ついに祈った通りの条件でIT企業の内定を得た。「お世話になった人へ恩返しの人生を!」と瞳を輝かせる。
コロナ禍という未聞の逆境をも成長のバネとできるかどうか。信仰で磨いた不屈の負けじ魂と、周囲の励ましという希望の追い風が大飛躍の原動力となろう。古今の歴史に照らし、若き日の試練が大きな世代は、それだけ未来に果たすべき使命が大きいと銘記したい。
池田先生は、小説『新・人間革命』で「誰もが、さまざまな試練や困難と戦っています。そのなかで、自分自身でどう希望をつくり、雄々しく生き抜いていくかです。これをやり抜いた人が真実の人生の勝利者なんです」とつづっている。
満開の桜に包まれ、新たな出発を切る全ての友に心からエールを送りたい。
☆いのちの賛歌 心に刻む一節 病と向き合う 2021年3月23日
企画「いのちの賛歌 心に刻む一節」では、御聖訓を胸に、宿命に立ち向かってきた創価学会員の体験を紹介するとともに、池田先生の指導選集『幸福と平和を創る智慧』(以下、「指導選集」)の指導を掲載する。今回は「病と向き合う」をテーマに、岐阜県の婦人に話を聞いた。
◇御文
『妙とは不死の薬なり』(御講聞書、831ページ)
◇通解
妙とは不死の薬である。
◇使命を自覚した喜び 迫られた命の選択
「残念ですが、お腹の中の赤ちゃんは諦めてください」。医師が見つめる先で、田中一恵さん=岐阜総県婦人部長=は言葉を失った。支部婦人部長を務めていた、37歳の秋のことだった。
◇
女子部時代から広布一筋に走り抜き、夫・史明さん(50)=同総県長=と結婚。長男・俊明さん(20)=学生部グループ長=を授かった翌年、第2子の妊娠が分かった。
自身に「乳がん」が見つかったのは、その頃だった。地元の医療機関で健康診断を受けた際、マンモグラフィー検査で胸部を写した画像に、異様な影がくっきりと見えたのだ。
「がんの可能性があります」。医師は眉根を寄せた。
数日後、田中さんは大学病院で精密検査を受けた。医師は静かに結果を告げた。「今、あなたの体の中には、赤ちゃんと、がんがあります。残念ですが、母子の両方を助ける手だてはありません」
自分自身の命か、胎児の命か。諦める「命」の選択を迫られた。今まで病気と無縁だった人生。思いもよらず突き付けられた現実に、頭の中が真っ白になった。
「"なんで私が?"って。長男はまだ1歳。"私が死んだら子どもはどうなるの?"って、がくぜんとしました。かといって、おなかの中にいるわが子も、絶対に失うわけにはいかない。『選べ』と言われて選べるものではありません。どちらにも進めない。八方ふさがり。絶望の谷間に蹴落とされたようでした」
治療方針を定めるまで、まだ猶予はあった。夫婦でしんしんと祈りを重ね、病魔と対峙する鍔際。葛藤と苦悩にさいなまれ、命が押しつぶされそうになった。
婦人部のリーダーとして友の前では努めて明るく振る舞ったが、一人になった途端、不安に生命が少しずつむしばまれていくのを感じた。
すがるように、池田先生の書籍をひもとく。ある時、手に取った『法華経の智慧』に、「妙とは不死の薬なり」(御書831ページ)との一節があった。
「先生はこの御文を拝して、生ある限り、妙法流布という偉大な使命に生ききる『信心』こそが『不老不死』の境地なのだと、仏法の深遠な生命観を教えてくださったんです」
師の指導を、何度も何度も読み返した。"そうだ! いかなる境遇だろうと、師匠と共に広宣流布に生きることほど、幸福な人生はないじゃないか!"——心の底からそう思えた時、攻め寄せていた己心の魔を打ち返し、胸の内から「迷い」が消えていくのが分かった。
「私自身の使命を果たすためにも、"絶対に病魔に負けるわけにはいかない! 何が何でも乗り越えてみせる!"って、勇気が湧いたんです。救う命を"どちらか選ぶ"ではなく"どちらも選ぶ"んだと。苦しくて仕方なかった心が、いつしか晴れ渡り、歓喜があふれてきました」
御本尊の前に座り直すと、唱題の声に自然と力がこもった。
やがて、腫瘍を再び精密に調べるため、病院で切開することに。どう治療を進めるかは、その後に決まるという。
婦人部の先輩が、すぐさま励ましてくれた。
「治療に当たる医師が『自分にとって世界最高の名医であるように』って祈るのよ! 絶対に大丈夫だから」
人生の波浪を乗り越えてきた言葉が、田中さんの不安をかき消し、祈りのギアを上げた。「広布に生きる人が守られないはずがない。必ず不可能を可能にしてみせる。祈るほど、心は定まっていきました」
いよいよ、検査のための手術当日。
医師が、局部麻酔をして手術台の上に横たわる田中さんの体に、メスを入れていく。しばらくして、腫瘍を確認した医師は、このまま、がんを切除する緊急手術に踏み切ることを決断した。
看護師たちが慌ただしく動く。手術室は、緊迫感に包まれた——。
数時間後、医師は、摘出した握り拳大の腫瘍を見せながら言った。「安心してください。あなたも、おなかの中の赤ちゃんも、もう大丈夫です」
後の病理検査で、腫瘍は悪性度が高かったため、あの場で摘出していなければ危なかったと分かった。
「手術は予定外でしたが、腫瘍の状態、私の体調、あの時の医師の判断や医療態勢など、全ての条件がそろった"結果"です。感謝してもしきれません」
半年後、長女・幸恵さん=女子高等部部長=を出産。元気な産声を聞いた時のあの喜びは、今も忘れられない。その後も田中さんは放射線治療とホルモン治療を続け、術後10年を経て「寛解」に至る。
「家族や信心の先輩、池田先生の度重なる励ましが、何よりの支えでした。だからこそ、途中、再発が疑われた時も、"これでまた題目をあげさせてもらえる!"って、心から感謝できたんです。いかなる境遇にも紛動されず、妙法と一体の大生命力で乗り越えていく境涯。私は題目をあげる中で『妙とは不死の薬なり』の御聖訓を命で確信できました」
池田先生は語っている。
「いかなる苦悩をもち、いかなる境遇にあろうが、その人でなければ果たせぬ尊き使命がある。それを深く自覚した時、すべては変わる」(「指導選集」第2部上巻)
「いろいろなことが人生には起こる。常に変化、変化である。結局、大事なことは、何があっても負けないこと。戦うこと。希望を失わないことである」(同第2部中巻)
「命」の重みと向き合ってきた自らの体験を通し、友へ励ましを送り続ける田中さん。
「今、私が全てに感謝できるのは、あの経験があったから。振り返れば、全部、意味があったんだって思えます。絶望の淵にあっても、私たちには信心がある。それ以上の喜びはありません」
[教学コンパス]
日本人女性の9人に1人が患うといわれる「乳がん」。早期発見・早期治療によって多くの方が治るといわれるが、国内の検診受診率は決して高くない。
仏法では医学を最大に尊重する。日蓮大聖人も、病に悩んでいた富木尼御前へのお手紙で、「重病ですら良医にかかり、早く治療すれば命を保つことができます」(御書985ページ、通解)と、速やかな治療の大切さを教えられ、続く箇所で、医術の心得があった四条金吾に診てもらうよう勧められている。一つ一つの励ましも具体的である。
病気に対して適切な医療が大切であることは言うまでもない。その上で、大聖人は同じお手紙で、「早く心ざしの財をかさねて」(同986ページ)と仰せだ。病気と闘う以前に、「心の次元」で病魔に勝つのか負けるのか。"断じて乗り越えてみせる"と強盛に祈る中で湧き出る生命力によって、医療も最大限に生かされるのであろう。
具体的な治療と、信心根本の強靱なる一念。この"両輪"こそが、病魔に打ち勝つ道にほかならない。(優)