2020年2月12日水曜日

2020.02.12 わが友に贈る

「一華を見て春を推せよ」
寒風に咲き誇る一輪は
皆に希望と歓喜を送る。
さあ凜として一人立ち
友情の花園を広げよう!

上野殿御返事 P1565
『しばらくの苦こそ候ともついにはたのしかるべし、国王一人の太子のごとしいかでか位につかざらんとおぼしめし候へ』

【通解】
しばらく苦しみが続いたとしても、最後には必ず楽しい境涯になる。たとえば、国王のたった一人の王子のようなものである。どうして国王の位につかないことがあるだろうかと、確信していきなさい。

名字の言 下積み時代の長かった作家・浅田次郎氏のこだわり 2020年2月12日
新人賞の落選は30回、初めて本を出版したのは39歳の時。ベストセラー作家の浅田次郎氏も、長い下積み時代を経験した▼今、氏は複数の文学賞の選考委員を務める。一つの賞につき、多くの応募作を読まねばならず、その労力は並大抵ではない。だが、氏は「この仕事には気合が入る。一行もおろそかにしてはならぬと思う」と。なぜなら「(新人賞を)三十回も落ちたのは何かのまちがいだったと、今でも信じているから」(『つばさよつばさ』集英社文庫)▼仮に氏が"とんとん拍子"で大成していれば、こうした思いは生まれなかったかもしれない。書き手の奮闘に思いをはせつつ、応募作に真剣勝負で向き合う。氏の作品にもまた、日々を懸命に生きる人々への温かなまなざしがある▼苦悩を味わった人でなければ、見えないものや気付かないことがある。池田先生は「自分が苦労した人は、他人の苦労も分かってあげられる。自分が努力したからこそ、他人の努力の尊さが分かるのである」と。悩みとの戦いは、自分自身のためであり、誰かを勇気づけるためでもある▼"自分を分かってくれる人がいる"と思えば、人は何度でも立ち上がれる。広布の労苦を無上の誇りとし、励まし合いながら、共に人間蘇生のドラマをつづろう。(値)

寸鉄 2020年2月12日
創価の人間主義こそ平和建設に欠かせない—市議我らの真心の振舞で拡大
「志有らん人人は互に之を語れ」御書。決意語らう座談会から壁破る前進を
友の為に悩むことは仏の悩みに通ず—恩師。毅然と地涌の使命に生き抜け
各国で偽ニュース対策に本腰。拡散で悪意は蔓延。送信前に必ず情報源確認
傲慢は常に没落の寸前に現れる—哲人。信者激減の宗門。民衆蔑視の末路

☆現代と仏法 第18回 「経済に不可欠な要素」
神戸学院大学教授 中村亨さん
経済学が専門の私は一昨年、研究で英国を訪れ、アダム・スミスが人生の大半を過ごしたカーコーディやグラスゴーなどに滞在しました。そして、なぜスミスが大著『国富論』『道徳感情論』を世に送り出すことができたのかを思索しました。
経済学の礎は、言うまでもなくスミスが築いたものです。しかし、スミスの「自己利益」や「利己心」のみが強調され、"自己利益の追求は、神の見えざる手に導かれるかのように社会全体の利益にもなる"との概念が経済学の中心に据えられてしまったのは、彼の両著を誤読したことから起こったものでしょう。
スミスは道徳・哲学の教授であり、彼が本当に重視したのは自己利益などではなく、シンパシー(共感)でした。
人を思いやる心——それが個々人に脈打ってこそ社会は発展していけると訴えたのです。

◇格差社会の原因は自己利益の追求
近年、彼のそうした観点に注目する学者もいます。ノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センも、その一人。センは、人間は他者の窮状に共感する心を持つとし、自己利益のみを追求する人間像を「合理的な愚か者」と批判しました。
最新の経済学は、さまざまな相手と"対等な契約関係"を結ぶことを考察し、首尾よく回る経済・社会を立案しています。しかし、現実には、世界の富裕層1%の持つ資産が残り99%の資産の合計を上回るという深刻な格差社会と持続不可能な環境悪化を招きました。
それは、スミスが指摘したような共感がないために、自己利益のみが優先され、"対等な契約関係"を結べないところ、すなわち"人の共感に頼るしかない領域"でほころびが出ていることが原因ではないでしょうか。
考えてみると、現代社会を揺るがす難問の多くは、ここに集中します。
環境問題の根源的な困難さは、資源を乱費する現在の世代と、温室効果や資源不足といった損失を被る将来世代との間で対等な契約を結べないところにあります。無力な幼児と虐待する親、学校でいじめに遭う子どもといじめる側との関係も同じでしょう。
もし、ここに「相手がどう思うか」「自分がその人の立場なら」と思いをはせ、少しでも共感する心が芽生えれば、一人一人の行動も変わり、結果は違うものになるはずです。社会がうまく回るためには、良い制度やシステムが大切なのはもちろんですが、それとともに、一人一人の共感の心を、いかに高めていけるかが不可欠なのです。

◇徹底して相手に寄り添う同苦の心
日蓮大聖人は「一切衆生の異の苦を受くるは悉く是れ日蓮一人の苦なるべし」(御書758ページ)と仰せの通り、あらゆる人々の苦悩に同苦するところに仏法の魂があると教えられています。ここでいう同苦とは、上から見下ろす哀れみでもなければ、表面的な同情でもありません。徹底して相手に寄り添い、共に悩み、相手が自分の力で立ち上がっていけるよう、関わり続けていく挑戦です。
また、法華経には「如我等無異(我が如く等しくして異なること無からしめん)」(法華経130ページ)という言葉があります。"一切衆生を自分と同じ境涯にまで高めたい"というのが仏の誓願であり、そこに私たちの使命もあることを示されているのです。

◇仏法の思想に世界を変えるヒント
こうした仏法の思想には、人々を思いやる"共感の心"があり、誰も置き去りにしない"真に対等な世界"を築くヒントがあるのではないでしょうか。その思想を自らの生き方とする創価のスクラムは、創立90周年を迎える今、世界192カ国・地域に広がりました。まだまだ世界の人口から見れば、その数は少ないかもしれませんが、こうした生き方が広がっていけば、世界は変わると思えてなりません。