2020年2月4日火曜日

2020.02.04 わが友に贈る

信用を築く根本は
約束を必ず守ること。
時間に遅れないこと。
「小事」が「大事」。
誠実一路の道を歩もう!

白米一俵御書 P1597
『法華経はしからず月こそ心よ花こそ心よと申す法門なり』

【通解】
法華経はそうではなく、「月がそのまま心、花がそのまま心」という法門なのである。

名字の言 巨匠たちが語るジャズの真髄とは? 2020年2月4日
ジャズの巨匠アート・ブレイキー氏がかつて、民音の招聘に応え、日本で公演したことがある。その折、音楽教室を開催し、学会の音楽隊・鼓笛隊にドラムの打ち方などを指導した。「形式や、型で打つのではない。心で打つのだ!」と▼ジャズの最大の特徴は「即興」にある。自らが発する音に他の奏者が反応し、他の奏者の音に自分も応えていく。その一音一音は奏者の心に湧き上がるもの。ゆえに一流のジャズ奏者であればあるほど、「心で演奏する」ことを強調するのだ▼ブレイキー氏とバンドを組んでいたウェイン・ショーター氏は語る。「自己を全面的にさらけ出し、心と心、本質と本質でぶつかり合う——それがジャズなのです」。いわばジャズは「楽器を通した対話」の芸術だ。心が響き合うほどにハーモニーは美しく研ぎ澄まされ、人の胸を打つ▼実際の対話も、共鳴し、高め合うところに醍醐味がある。小説『新・人間革命』第26巻「法旗」の章に「対話——それは、人間の心の扉を開く魂の打ち合いであり、良心の共鳴音を生み出すことができる生命の音楽である」とある▼「令和」に入り、初の「伝統の2月」。「令和」の英訳「ビューティフル・ハーモニー」のように、心を結ぶ"対話のハーモニー"をあの地この地で奏でよう。(澪)

寸鉄 2020年2月4日
個人主義の仏はいない—牧口先生。徹底して一人を励ます実践が広布の要
「東洋哲学研究所の日」。仏法の智慧で文明間・宗教間の架橋を—使命深く
中野の日。大東京に光る妙法の人材山脈。絶対できる!弾む心で対話拡大
「力は活動を止めた瞬間に消える」思想家。人生の栄冠は進み続ける人に
iPS細胞の活用で再生医療の発展加速と。価値ある生き方の探求も更に

☆第45回SGI提言� 日本で「気候変動と防災」の国連会合を
気候変動を巡る問題に焦点を当て日本で国連の防災会合を
◇災害の発生件数が10年で5倍に増加
第三の提案は、気候変動と防災に関するものです。
気候変動を巡って取り組みが迫られているのは、温室効果ガスの削減だけではありません。異常気象による被害の拡大を防止するための対応が待ったなしとなっています。
先月、スペインのマドリードで行われた気候変動枠組条約の第25回締約国会議(COP25)でも、この二つの課題を中心に討議が進められました。
COP25に寄せてNGOのオックスファムが発表した報告によると、気候変動による災害の発生件数は過去10年間で5倍にまで増加しているといいます。
世界全体でみると、地震などの災害や紛争よりも、気候変動が原因で避難した人数が圧倒的に多い状況が生じているのです。
そこで私は、「気候変動と防災」に関するテーマに特に焦点を当てた国連の会合を日本で行うことを提唱したい。 
国連防災機関では、各国の政府代表や市民社会の代表などが参加する「防災グローバル・プラットフォーム会合(防災GP会合)」を、2007年から開催してきました。
2年ごとに会合を重ねる中で、2015年には仙台で行われた第3回「国連防災世界会議」をもってその開催に代えられたほか、昨年5月にスイスのジュネーブで会合が行われた際には、182カ国から4000人が参加して討議が進められました。
今後は3年ごとに開催される予定となっており、2022年に行われる防災GP会合を日本で開催して、異常気象による被害の拡大防止と復興の課題について集中的に討議していってはどうかと思うのです。
5年前の国連防災世界会議で採択された仙台防災枠組(※注5)では、災害の被災者を2030年までに大幅に減少させるなどの目標が打ち出されました。
これまで積み上げてきた各国の経験を生かしながら、異常気象による災害についても早急に対策を強化していくことが求められるのではないでしょうか。
すでにインフラ(社会基盤)の整備については、インドの呼び掛けで「災害に強いインフラのための連合」が昨年9月に発足しています。
これまで重点が置かれてきた地震などの災害への対応だけでなく、気候変動の影響にも強いインフラの構築を目指すグローバルな枠組みで、技術支援や能力開発に関する国際的な連携を進めるものです。
異常気象による被害が相次ぐ日本もこの連合に参加しており、インドをはじめ他の加盟国と協力しながら、防災GP会合でこの分野における国際指針のとりまとめをリードしていくことを提案したい。
また、防災GP会合の中心議題の一つとして、気候変動と防災に関する自治体の役割をテーマに取り上げ、その連携を大きく広げる機会にしていくべきだと思います。
現在、国連防災機関が「災害に強い都市の構築」を目指して進めるキャンペーンには、世界の4300を超える自治体が参加しています。そのなかには、モンゴルやバングラデシュのように、すべての市町村がキャンペーンに参加している国も出てきました。
キャンペーンが始まってから本年で10年になりますが、今後は異常気象への対応に特に重点を置く形で自治体間の連携を進めることが大切になると思います。
世界の人口の4割は海岸線から100キロ以内に住んでおり、その地域では気候変動の影響によるリスクが高まっています。
日本でも人口の多くが沿岸地域で暮らしています。中国や韓国をはじめ、アジアの沿岸地域の自治体と、「気候変動と防災」という共通課題を巡って互いの経験から学び、災害リスクを軽減するための相乗効果をアジア全体で生み出していくべきだと考えるのです。
本年6月には、アジア太平洋防災閣僚級会議がオーストラリアで行われます。会議を通じて自治体間の連携に関する議論を深め、2022年の防災GP会合でその世界的な展開につなげることを目指していってはどうでしょうか。

誰も置き去りにしない社会へレジリエンスの強化を推進
◇障がいのある人を取り巻く状況
加えて、次回の防災GP会合の開催にあたって呼び掛けたいのは、気候変動で深刻な影響を受ける人々を置き去りにしないための社会づくりについて、重点的に討議を行うことです。
男女平等と社会的包摂の促進を掲げた昨年のジュネーブでの会合では、登壇者の半数と参加者の4割を女性が占めたほか、120人以上の障がいのある人が参加しました。
SDGsのアドボケート(推進者)の一人で、会合に出席した南アフリカ共和国のエドワード・ンドプ氏は、災害時の社会的包摂への思いをこう述べました。
「障がい者は世界人口の15%を占める最大のマイノリティー(社会的な少数派)ですが、一貫して存在が忘れられてきました」
「(災害時に)障がい者を物理的に置き去りにしてしまう行為と、日常生活において排除が障がい者にもたらす極めて現実的な影響とは、つながりがあるのです」と。
脊髄性筋萎縮症を2歳の頃から患ってきたンドプ氏は、災害が起きた時に最も危険にさらされる人々に対する「社会的な態度の再構築」が必要となると訴えていたのです。
私は、防災と復興を支えるレジリエンス(困難を乗り越える力)の強化といっても、この一点を外してはならないと思います。
普段の生活の中で「共に生きる」というつながりを幾重にも育む土壌があってこそ、災害発生時から復興への歩みに至るまで、多くの人々の生命と尊厳を守る力を生み出し続けることができるからです。
また、ジュネーブ会合での災害とジェンダーを巡る討議でも、"目に映らない存在にされてきた人々"を"目に見える存在"にすることが大切になるとの指摘がありました。
日常生活において女性が置かれている状況は、社会的な慣習や差別意識などによって当たり前のように見なされることが多いために、本当に助けが必要な時に置き去りにされる恐れが強いことが懸念されます。
例えば、異常気象の影響で避難が必要になった時、女性は家を出るのが最後になることが多いといわれます。男性が離れた場所で働いている場合には、子どもたちや高齢者や病気の家族の世話をする必要があるため、家を出るのが遅れがちになるからです。
しかしその一方で、災害が起きた時に、地域で多くの人々を支える大きな力となってきたのは女性たちにほかなりませんでした。

◇昼間の星々の譬え
この点に関し、UNウィメン(国連女性機関)も、次のように留意を促しています。
被災直後から発揮されるリーダーシップや、地域でのレジリエンスの構築に果たす中心的役割など、防災における女性たちの実質的な貢献とともに、潜在的な貢献は、大きな可能性を持つ社会資産であるにもかかわらず、あまり注目されてこなかった——と。
明らかに存在するのに見過ごされがちになるという構造的な問題について考える時、私は大乗仏教の経典に出てくる"昼間の星々"の譬えを思い起こします。
天空には常に多くの星々が存在し、それぞれが輝きを放っているはずなのに、昼間は太陽の光があるために、星々の存在に意識が向かなくなることを示唆したものです。
日常生活においても災害時においても、地域での支え合いや助け合いの要の存在となってきたのは、女性たちであります。
地震などの災害に加えて、異常気象への対応策を考える上でも、あらゆる段階で女性の声を反映させることが、地域のレジリエンスの生命線になるのではないでしょうか。
本年は、ジェンダー平等の指針を明確に打ち出した第4回世界女性会議の「北京行動綱領」が採択されて25周年にあたります。
そこには、こう記されています。
「女性の地位向上及び女性と男性の平等の達成は、人権の問題であり、社会正義のための条件であって、女性の問題として切り離して見るべきではない。それは、持続可能で公正な、開発された社会を築くための唯一の道である」と。
このジェンダー平等の精神は、防災においても絶対に欠かせないものです。
その意味から言えば、災害にしても、気候変動に伴う異常気象にしても、インフラ整備などのハード面での防災だけでは、レジリエンスの強化を図ることはできない。
ジェンダー平等はもとより、日常生活の中で置き去りにされがちであった人々の存在を、地域社会におけるレジリエンスの同心円の中核に据えていくことが、強く求められると訴えたいのです。
私どもSGIも、信仰を基盤にした団体(FBO)として、災害時における緊急支援や、被災地の復興を後押しする活動に取り組む一方で、防災GP会合をはじめとする国際会議に継続して参加してきました。
2017年のメキシコでの防災GP会合では、「FBOによる地域主導の防災——仙台防災枠組の実践」と題するシンポジウムを行ったほか、キリスト教やイスラム教などさまざまな宗教的背景を持つFBOと協力して共同声明をまとめ、昨年のジュネーブ会合でも引き続いて共同声明を発表してきました。
また2018年3月に、他のFBOの4団体と連携して「持続可能な開発のためのアジア太平洋FBO連合(APFC)」を結成し、同年7月にモンゴルで開催されたアジア防災閣僚級会議に共同声明を提出しました。
そこには、私たち5団体の共通の決意を込めて、こう記しています。
「FBOの使命の根幹にあるのは、社会的な弱者を生む根本原因に対処する意志であり、社会の片隅に置かれた人々に希望と幸福をもたらすことである」
「信仰を基盤にした団体は、防災とレジリエンスの構築と人道的な行動を地域で進める上で重要な役割を果たしている」と。
今後も、この精神を他のFBOと共有しながら、すべての人々の尊厳を守るための社会的包摂のビジョンを掲げて、レジリエンスの強化を後押ししていきたいと思います。

☆第45回SGI提言� 「教育のための国際連帯税」を創設
「教育のための国際連帯税」を創設し人道危機下の子どもたちを支援
◇紛争や災害での心の傷を癒やす
最後に第四の提案として述べたいのは、紛争や災害などの影響で教育の機会を失った子どもたちへの支援強化です。
持続可能な地球社会を目指すといっても、次代を担う子どもたちの人権と未来を守ることが要石となると考えるからです。
本年9月に発効30周年を迎える、子どもの権利条約は、今や国連の加盟国数よりも多い196カ国・地域が参加する、世界で最も普遍的な人権条約となりました。
教育の権利の保障も明記される中、条約の発効時には約20%に及んでいた、小学校に通う機会を得られていない子どもの割合は、今では10%以下にまで減少しました。
しかしその前進の一方で、紛争や災害の影響を受けた国で暮らす子どもたちの多くが深刻な状況に直面しています。
例えば、紛争が続く中東のイエメンでは240万人の子どもたちが学校に通うことができず、学校施設も攻撃を受けてひどく損傷していたり、軍事拠点や避難場所に使用されたりしている所が数多くあります。
また、気候変動の影響による災害が続くバングラデシュでは、多くの家族が貧困や避難生活に追い込まれる中で、子どもたちの健康が危ぶまれているほか、教育の機会が失われている状態が広がっています。
世界では、こうした紛争や災害の影響で教育の機会を失った子どもや若者の数は1億400万人にも及んでいますが、人道支援の資金の中で教育に配分されるのは2%ほどにとどまってきました。
食糧や医薬品などの物資の支援と比べて、"人命には直接関わらない"といった理由で、緊急事態が起きた直後の期間のみならず、復興に向けた歩みが始まった時期以降も、後回しにされがちになってきたからです。
しかし、ユニセフ(国連児童基金)が強調するように、子どもたちにとって学校の存在は、日常を取り戻すための大切な空間にほかなりません。学校で友だちと一緒の時間を過ごすことは、紛争や災害で受けた心の傷を癒やすための手助けにもなります。
こうした問題を踏まえて、4年前の世界人道サミットで設立をみたのが、ユニセフが主導するECW(教育を後回しにはできない)基金でした。
緊急時の教育に特化した初めての基金であり、現在まで、人道危機に巻き込まれた190万人以上の子どもや若者たちに教育の機会を提供する道を開いてきました。
緊急時の教育支援は、人道危機が長期化した場合の教育支援とともに、子どもたちが安心と希望を取り戻し、将来の夢を思い描いて前に進むためのかけがえのない基盤となるだけでなく、地域や社会にとっても平和と安定をもたらす源泉となるものです。
ECW基金のヤスミン・シェリフ事務局長は、こう述べています。
「もし、その社会の市民と難民の人々が、読み書きができず、論理的な思考ができず、教師や弁護士や医師もいない場合、どうやって社会経済的に発展可能な社会を築くことができるというのでしょうか」
「教育は、平和と寛容と相互尊重を促進するための鍵です。女の子と男の子が教育に平等にアクセスできた場合には、暴力や紛争が発生する確率は37%も減るのです」と。

◇「失われた世代」を生み出さない
国連のSDGsで"すべての子どもたちに質の高い教育を"との目標が掲げられる中、紛争や災害の影響を受けた国で暮らす子どもたちが、「失われた世代」として置き去りになるようなことは、決してあってはならない。
ECW基金が設立された2016年の時点での推計では、人道危機に見舞われた7500万人の子どもたちに基礎教育を提供するには毎年85億ドル、1人あたりで年間113ドルが必要になると見込まれていました。
現在、その対象人数は1億400万人に及び、必要額も増えているものの、世界全体の1年間の軍事費である1兆8220億ドルのほんの一部に相当する資金を国際的な支援などで確保できれば、厳しい状況にある多くの子どもたちが、希望の人生を歩み出すきっかけを得られるのです。
その意味で私は、誰もが尊厳をもって安心して生きられる持続可能な地球社会を築くための挑戦の一環として、ECW基金の資金基盤の強化を図り、緊急時の教育支援を力強く進めていくことを呼び掛けたい。
かつて私は2009年の提言で、国連が当時進めていた「ミレニアム開発目標」の達成を後押しするために、国際連帯税などの革新的資金調達メカニズムの導入を促進することを提唱したことがあります。
SDGsの推進において、その必要性はさらに増しており、「教育のための国際連帯税」の創設をはじめ、資金基盤を強化するための方策を検討すべきではないでしょうか。
これまで連帯税としては、フランスなどの国々が導入している航空券連帯税(※注6)があり、エイズや結核やマラリアの感染症で苦しむ途上国の人々を支援するための国際的な資金に充てられてきました。
また5年前からは、発育阻害に苦しむ子どもたちを支援する国連の「ユニットライフ」の枠組みが進められています。
日本も昨年、開発のための革新的資金調達メカニズムのあり方を討議するリーディング・グループの議長国を務める中、7月に行われたG7(主要7カ国)開発大臣会合で、国際連帯税を含む革新的資金調達を活用する必要性について言及しました。
これまで日本は、内戦が続く中東のシリアで、ユニセフと連携して約10万人の小学生のために教科書を配布し、約6万2000人の子どもたちに文房具と学校用のカバンを支給してきました。またアフガニスタンでも、支援が不足しがちだった地域で70校の学校を建設し、約5万人の子どもたちが学習にふさわしい環境で授業を受けられるようになっています。 
私は、教育分野の支援において豊かな実績を持つ日本が、「教育のための国際連帯税」をはじめ、さまざまなプランを検討する議論をリードしながら、ECW基金の資金基盤を強化するための枠組みづくりで積極的な役割を担うことを強く呼び掛けたいのです。
避難した先で教育の機会を得ることが、子どもと家族の心にどれだけ希望を灯すのか。
その一つの例を国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が紹介しています。
——中米のニカラグアで2人の子どもと暮らしていたある母親は、情勢不安が続く中、葛藤を抱きながら隣国コスタリカへの避難を決めた。「学校を辞めさせ、避難することは苦しい決断でした。でも、これ以上危険な目にあわせるわけにはいかなかった」と。
学校に在学証明書を取りに行くのも危険な中、小さなカバン一つで避難しなければならなかったため、子どもたちは避難先で学校に通うことができるだろうかと胸を痛めていたところ、コスタリカではすべての子どもに無償の初等教育が保障されていた。
特に、避難民がいるコスタリカ北部の小学校の多くでは、公的な書類がなくても入学でき、避難で学習が遅れてしまった子どものために補習などのシステムまで用意されていた。
そのおかげで、2人の子どもたちも教育の機会を取り戻すことができた。
14歳の兄は、「今一番うれしいことは勉強できること。将来はお医者さんになりたい」と目を輝かせ、10歳の妹と手をつないで元気に学校へ通うようになった。
学校の教員も、「故郷を離れなければならなかった子どもたちが、学校を家のように感じられるようになれば」との思いで迎え入れている——と。(UNHCR駐日事務所のウェブサイトを引用・参照)
人道危機によって教育の機会を失った1億400万人という膨大な数字の奥には、一人一人の子どもの存在があり、人生の物語があります。
この子どもたちにも同様に教育の機会が確保されれば、彼らが生きる希望を取り戻し、夢に向かって進むための足場となるに違いないと訴えたいのです。

「創価教育学体系」に脈打つ牧口会長と戸田会長の精神
◇ランプの絵柄に込められた思い
私どもSGIも、社会的な活動の三つの柱として、平和や文化とともに教育に力を入れ、「民衆の民衆による民衆のためのエンパワーメント(内発的な力の開花)」の取り組みを、世界192カ国・地域で進めてきました。
その精神の源流を象徴するような絵柄が、ともに教育者だった牧口初代会長と戸田第2代会長の師弟の絆によって、今から90年前(1930年11月18日)に発刊された『創価教育学体系』の扉に描かれています。
ランプの先に灯された火が光を放つ姿をイラストにしたもので、その絵柄はケースにも描かれ、本の表紙にも刻印されていました。
社会が大きな混乱や脅威で覆われた時、その嵐に容赦なくさらされ、激しい波に特に翻弄されるのは、常に子どもたちです。
その状況に胸を痛めた牧口会長は、小学校という教育の最前線に立ち続け、子どもたちの心に希望を灯すことに最大の情熱を注ぐ一方で、幸福な人生を切り開く力を養うための人間教育のあり方を探求し、『創価教育学体系』という大著に結晶させていったのです。
牧口会長は30代の頃、日露戦争の最中にあって、日本で立ち後れていた女性教育の普及のために力を注いだ経験がありました。しかも、戦争で父親が亡くなったり、傷病を負ったりしたことで経済的に困窮する家庭が増える中で、授業料の全額免除や半額免除の制度まで設けていました。
また40代には、貧困家庭のために特別に開設された小学校で校長を務め、病気の子どもの家に見舞いに行って自ら世話をしたほか、食事が満足にできない子どもたちのために学校給食を実施していたのです。
いずれも、牧口会長自身が家庭的な事情で十分に教育を受けられなかった時期があり、その辛さが身に染みていたからこその行動だったのではないかと思えてなりません。
そして50代の時には、関東大震災(1923年)で罹災したために転校を余儀なくされた子どもたちを受け入れ、学校として学用品を用意したほか、教え子たちの置かれた状況が心配で、かつて校長を務めた小学校のある地域にまで足を運んでいたのです。
弟子である戸田会長も、戦時体制下の1940年以降の時期に、子どもたちのために35冊に及ぶ学習雑誌を発刊していました。
軍部政府の思想統制が強まる中で牧口会長とともに投獄され、牧口会長が獄中で生涯を閉じた後も、子どもたちの幸福を願う思いは消えることはなかった。
2年に及ぶ獄中生活にも屈することなく、出獄をした翌月に終戦を迎えた時、即座に立ち上げたのも子どもたちのための通信教育でした。戦後の混乱で十分に機能しない学校が多い中で、教育の機会を途切れさせないために率先して道を開こうとしたのです。
このように牧口会長と戸田会長の胸中には、"いかなる状況に置かれた子どもたちにも、教育の光を灯し続けたい"との信念が脈打っていました。創価学会の創立の原点でもある『創価教育学体系』の扉に描かれたランプの灯火には、そうした二人の先師の誓いと行動が込められている気がしてならないのです。
ランプの姿がいみじくも物語るように、教育の光は誰かの支えがなければ途切れてしまうものです。情熱を注ぎ続ける人々の存在があり、その人々を支える社会があってこそ輝き続けるものにほかなりません。
私も先師の思いを受け継いで、東京と関西の創価学園や創価大学をはじめ、アメリカ創価大学やブラジル創価学園などの教育機関を創立するとともに、各国の教育者との対話を重ねながら、子どもたちの尊厳と未来を支える「教育のための社会」を建設する挑戦を半世紀以上にわたって続けてきました。
今後もSGIは、「教育のための社会」の重要性を訴える意識啓発に努めるとともに、気候変動をはじめとする地球的な課題に取り組む連帯を広げるために、「民衆の民衆による民衆のためのエンパワーメント」を力強く推進していきたいと思います。