「父母に孝あるべし」
報恩の人生は美しい。
君よ親孝行の人たれ!
自らの成長と
勝利の実証で光れ!
陰徳陽報御書 P1178
『わどのの正直の心に主の後生をたすけたてまつらむとをもう心がうじやうにしてすれんをすすればかかるりしやうにもあづからせ給うぞかし此は物のはしなり大果報は又来るべしとおぼしめせ』
◇人生の座標
人間が凶暴なインベーダー(侵略者)として、地球環境を破壊してしまったのが二十世紀だとすれば、二十一世紀を担う子どもたち、若者たちを育てる教育には、自然との触れ合い、コミュニケーションをどう保全するかという視点は、絶対に欠かせません。
☆こころに響く言葉
宗教の必要性
はたして、絶対的幸福というものは、実現できるのだろうか。
そこに、私は人生の根本とも言うべき大宗教の必要を痛感するのである。
☆中国・広東外語外貿大学池田思想シンポジウム 名誉会長のメッセージ
広東省の尊き教育と学術のネットワークは、アジアへ、世界へ、常に新鮮な英知の旭光を放ってこられました。
本日は、懐かしき広州の天地に、尊敬する先生方が集われてのシンポジウムの開催に、感謝と連帯のメッセージを送らせていただきます。
会場として迎えてくださった広東外語外貿大学をはじめ、ご尽力いただいている関係の先生方に、心から御礼を申し上げます。
今回の大テーマは、「幸福を創造する力」と伺いました。簡明でありながら、何と深遠な命題でありましょうか。
全ての人間社会の営みは、哲学や宗教はもちろん、学問や科学も、ひいては政治や経済も、つきつめれば一人一人の幸福のために、そして、人類の幸福の創造のために存在するといっても過言ではありません。
ここにこそ、私たちが絶えず立ち返るべき原点があります。
ここにこそ、胸襟を開き、自らの専門分野を超えて各界の知性と対話を重ねるとともに、現実社会に勇んで飛び込み、市井の友と苦楽を分かち合いながら、共に探究していくべき主題があります。
その意味において、今回のシンポジウムは、21世紀の世界の在り方と人類の進路を、最も普遍的な次元から問い直す、誠に意義深き試みであり、碩学の先生方の真摯な挑戦に、私は最大の敬意を表するものであります。
私も、先生方とご一緒に参加し、討議に連なる思いで、簡潔に3点、所感を申し述べさせていただきます。
第一に、「幸福を創造する力は、人間生命への信頼から湧き出ずる」ということであります。
私は「人間は幸福になるために生まれてきた」と信ずる一人です。
幸福とは、恩寵として外から与えられるものではありません。自らが内面から創造していくものであります。
そのための力が万人の生命に厳然と具わっていることを、中国をはじめ東洋の先哲たちは明確に論じ、示してこられました。
貴国の6世紀の大哲人・天台大師智�(ちぎ)は、大乗仏典の精髄である「法華経」に基づいて「一念三千」の生命論を完成されました。その端的な説明として、「摩訶止観」では、「華厳経」の一節である「心如工画師」——心は工なる画師の如し——が引かれています。
卓越した画伯が自在の境地で優れた名画を縦横無尽に描き出すように、人間は、この心、この生命から、ありとあらゆる価値を創り出していくことができると、明かされているのであります。
仏法では、さらにわかりやすく『さいわいは心よりいでて我をかざる』(P1492、「十字御書」)とも説かれております。
外の環境に左右されるのではありません。汝自身の内なる生命にこそ、尽きることのない幸福の源泉があります。
この幸福の源泉に目覚めていくことは、一人一人に生きる喜びをもたらし、苦難に挑みゆく勇気と希望と自信を引き出してくれます。難問が山積し、不安と不信が渦巻く時代だからこそ、こうした人間教育の励ましの啓発を一段と強めていきたいと思うのであります。
ともあれ、人類の探究は、これからますます外なる大宇宙の実像を解明し、新たな英知の世界を広げていくでありましょう。その解明と相まって、大宇宙を包みゆく内なる人間生命により深く光を当てて、一切を幸福の創造へと生かし連動せしめていく智慧の湧現が、いよいよ求められているのではないでしょうか。
本シンポジウムは、まさに、その重要な一歩であります。
第二に申し上げたいのは、「幸福を創造する力は、他者との共生・連帯によって輝き光る」ということであります。
私が語らいを重ねた文豪・巴金先生は、こう綴っておられました。
「地上のすべての人は平等なのだ。およそ自分の幸福を他人の苦しみの上に築き、あれこれ方法を使ってその幸福を維持しようとする者は長生きできない」〈山口守訳『リラの花散る頃』〉と。
あえて厳しい表現で、幸福の正道を表現しておられます。
かつて私も、関西創価学園の開学にあたり、創立者として、新入生へ「他人の不幸のうえに自分の幸福を築くことはしない」との指針を贈りました。
自らの幸福だけを追い求めても、結局、崩れざる幸福をつかむことはできない。自他共の幸福を祈り、他者の幸福のために尽くして行動する。
そこに真の充実があり、自ずと幸福がついてくるからであります。
私の恩師である戸田城聖先生は、戦時中、日本の軍国主義と対峙し、2年間の投獄にも屈しなかった平和の闘士でありました。
恩師は、孔子の「己の欲せざる所を人に施す事なかれ」との教訓を踏まえつつ、青年に「他を利するものを汝は施せ」と教えました。そして、戦後の荒廃した社会の中で、率先して民衆奉仕の模範を貫くとともに、東西冷戦下にあって「地球民族主義」という平和と共生のビジョンを掲げたのであります。
今、世界は、持続可能な地球社会を創造するために、環境やエネルギー問題はもとより、人間の安全保障のための幅広い分野での連帯と協働が喫緊の課題となっております。
と同時に、自他共の幸福を創造する青年世代の命の熱と力を、いやまして高めゆく教育が要請されているといってよいでありましょう。
来月からは、貴国の中国人民対外友好協会、上海文化発展基金会、上海歌舞団と、私の創立した民音〈民主音楽協会〉が共同制作した舞劇「朱鷺」のツアー公演も日本全国で開催される運びとなっております。
中国と日本の友好の象徴である朱鷺をモチーフに、自然と人間の共生、人類の平和の心の継承を、見事に謳い上げた圧巻の舞台であります。
「青年たちの幸福」という一点を見つめ、いかなる差異も超えて大同団結して、教育と文化の交流を粘り強く促進していくところに、必ずや人間主義の共生と連帯は拡大していくことを、私は確信してやみません。
そして第三に、「幸福を創造する力と、平和な未来を創造する力は一体不二である」と確認し合いたいのであります。
ここ広東省に誕生し、広州を起点に歴史回転の大業を果たされた孫文先生は、『大学』の「格物」「致知」「誠意」「正心」「修身」「斉家」「治国」「平天下」の8条目に即して、「一人の人間を内から外へと発展させ、一人の人間の内部からはじめて『平天下』にまでおしおよぼすものである」と説かれておりました。
一人一人の幸福なくして世界の平和は勝ち取れません。また、世界の平和なくして、一人一人の誠の幸福もあり得ないでしょう。
打ち続く試練にも断じて怯まぬ実践の中で、孫文先生が「人間革命による幸福の創造」と「社会の変革による平和の創造」との連動を一貫して追求されていたことに、私はあらためて感銘を禁じ得ません。
その根底には、「善は栄え、悪は滅びる」という天の法則にのっとる限り、必ず正義は成就するという孫文先生の揺るぎない信念がありました。
今、私は、小説『新・人間革命』に、孫文先生の大闘争のご生涯を綴りながら、世界の友へエールを送っております。
孫文先生は、広東省の若人に語られました。
「道路の開削に譬うれば余は荊を披き棘を斬る者で、諸君等は橋梁を架し石をたたむ者であるから、諸君の責任の重きこと、遥に余に過ぐるものがあるのである」と。
この孫文先生の精神を真っすぐに受け継いでおられるのが、今日、お集まりの知性と人格の教育指導者であります。
私も、先生方と共々に、「明天会更好(明日はもっと良くなる)」との不屈の楽観主義で、世界平和の金の橋を架け、民衆の幸福の大道を開きゆく決心であります。
最後に、今回のシンポジウムに参加された全ての方々のさらなるご健勝と栄光を心よりお祈り申し上げ、メッセージとさせていただきます。
謝謝(シェシェ)! (中国語で「ありがとうございました!」)