2021年9月6日月曜日

2021.09.06 わが友に贈る

◇今週のことば
「礼儀いささか・
をろかに思うべからず」
乱世なればこそ
誠実の振る舞いで開け!
信念の人間外交で勝て!
2021年9月6日

富木殿女房尼御前御書 P990
『むかしはことにわびしく候いし時よりやしなはれまいらせて候へばことにをんをもく(恩重く)をもいまいらせ候』

【通解】
昔、特に不自由であった時から御供養をお受けしてきたので、貴女の御恩をまことに重く思っています

名字の言 勇気と感動をくれた東京パラリンピック 2021年9月6日
大空に緑色の線を引く青色の飛行機。大地に咲く青い朝顔の花。それらを母子が見つめている——。絵の題名は「ブルーインパルスとあさがお」。小学1年の少女部員が、東京パラリンピックの開幕に合わせて飛行したブルーインパルスを見て描いた▼勇気と感動を与えてくれたパラリンピックが閉幕した。人間の強さや無限の可能性を示した選手たちの雄姿は、言葉では言い表せない努力、努力の結晶だったに違いない▼「両手足がないフェンシング選手」と呼ばれる、イタリアのビオ選手は「自分を信じてハードワークをすればやりたいことは何でもできる」と。「不可能はないということを証明したい」と言うのは、卓球に出場したエジプトのハマドトゥ選手。両腕がない彼は足の指でボールを挟んでサーブのトスをあげ、口にくわえたラケットで打つ▼「レースでの強さだけでなく、私の折れない心(レジリエンス)を見てほしい」とは、陸上・車いすのクラスのメダリスト、アメリカのマクファーデン選手。彼女のモットーは「私にはできる」(選手の言葉はNHKのHPから)▼一筋の飛行機雲のように、誰かの心に人生の"光路"を残したい。ブルーインパルスの合言葉は「創造への挑戦」である。

寸鉄 2021年9月6日
学会の対話から多様な人と結び合える事を学んだ—学長。共生世紀の主役
誰が何と言おうと同志と一緒に前へ—恩師。皆で今できる挑戦を粘り強く
「我が身の外に仏無し」御書。自分が祈り、自分が変わる。ここに広布の魂
10分多く歩くだけで死亡リスク低下と。体動かす習慣を賢く。健康のため
子のネット利用時間が増—調査。依存化せぬよう規則決めを。親子で話し

〈社説〉 2021・9・6 躍動の東京パラが閉幕
◇皆が伴走者で「共生」の社会に
「スリーアギトス」——赤・青・緑の三本の曲線からなるパラリンピックのシンボルマークの名称だ。三色は国旗で最も多く使用されている色で、曲線は「動き」を象徴し、「アギト」はラテン語で「私は動く」という意味である。
約4400人の選手が躍動し切った、第16回夏季パラリンピック東京大会が5日閉幕した。
閉会式のコンセプトは「Harmonious Cacophony(調和する不協和音)」。「違いがあることで対立が生じるのではなく、新たな未来が生まれていく」との意味を込めたという。多様性を認め合う「共生」という、パラリンピックのテーマを感じる演出だった。
また5日は、マラソンT12(視覚障がいのある人のクラス)、通称ブラインドマラソンが行われ、女子では道下美里選手が金メダルを獲得した。レースをテレビで観戦していると、「GUIDE」と書かれたゼッケンを着け、選手とロープを握り合いながら走る人の姿があった。伴走者とも呼ばれている人たちである。
道下選手はレース後のコメントで「最高の伴走者と最強の仲間がいたので、ここにたどりついたと思っている」と述べていた。
ブラインドマラソンにおいて、伴走者はとても重要だ。女子マラソンT12の世界記録は2時間54分13秒、今回の優勝タイムは3時間0分50秒である。これだけのスピードで走りながら、伴走者は道案内だけではなく、ペースメーカーとなり、能力を最大限に引き出す励ましの声掛けなども行う。
二人を繋ぐロープは「きずな」とも呼ばれ、このロープを通してお互いの調子や感じていることまで伝わるという。まさに、信頼関係によってドラマが生まれるのがブラインドマラソンだ。
「伴走者はレースを共に走るだけの存在ではない。誰かを応援し、その願いを叶えようと思う者は、みんな伴走者なのだ」(浅生鴨著『伴走者』講談社文庫)——同競技を題材にした小説の一節だ。
御書に「植えた木であっても、強い支柱で支えれば、大風が吹いても倒れない」(1468ページ、通解)との印象的な例えがある。支え合うことがどれほど大切か。
私たちは、一人だけで生きていくのは難しい。だからこそ、皆で支え合い応援し合い、皆が誰かの伴走者として、一人一人が輝ける「共生」の社会を築いていきたい。

☆共生の地球社会へ〜仏法の英知に学ぶ テーマ:貧困問題
登場人物
【ミライさん】好奇心旺盛な女子部員。世の中の出来事について、父・ホープ博士と語り合うことを楽しみにしている。
【ホープ博士】勉強熱心な壮年部員。毎月1回、家族と一緒に教学を研さんしている。「博士」はニックネーム。本業は会社員。

◇現実を見つめ、行動の一歩を
ミライ 東京オリンピック開会式で、バングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス氏に「オリンピック月桂冠賞」が授与されたね。
アスリートを支えるなど、スポーツ界での社会貢献活動が評価されたようね。氏は、貧困問題でも知られているね。

ホープ 世界最貧国といわれ、大飢饉で苦しむ祖国の窮状を目の当たりにしたユヌス氏は、貧しい人々の自立を促すために、少額の資金を無担保で融資する取り組みを始めたんだ。その資金を元手に技能を生かした仕事が新たに生まれ、所得が創出されるようになったんだよ。

ミライ ユヌス氏と、氏が創設した銀行は、貧困軽減に大きく貢献したとして、2006年(平成18年)にノーベル平和賞を受賞したよね。

ホープ 今でも世界人口の1割に当たる、約7億人が1日1・9ドル(約207円)未満の生活を強いられているんだよ(本年2月現在)。
住む家がなかったり、食料が買えなかったりするなど、生きていくために必要最低限の生活ができない状態を「絶対的貧困」というんだ。
こうした極度の貧困に苦しむ人の割合は、1990年に比べ3分の1以下まで減少してきたけど、まだまだ深刻なんだ。

◇人権の究極の否定
ミライ 国連が進めるSDGs(持続可能な開発目標)では、2030年までに世界中で極度の貧困にある人をなくすことや、さまざまな次元で貧困ラインを下回っている人の割合を半減させることを目標にしているよ。
けれども、"コロナ禍の影響で、貧困撲滅の目標達成は困難な状況"と報道されているね。

ホープ さらに、地域差なども課題なんだよ。特にサハラ以南のアフリカ地域や南アジアが深刻で、極度の貧困状態で生活している人の8割を占めているんだ。また、女性は男性と比べて雇用の機会も少ないから、貧困状態に陥りがちだ。

ミライ そうした地域では、農業を主な収入源としている人が多いから、気候変動や自然災害の影響を受けてしまうと、さらに貧困は深刻化してしまう。紛争や難民、教育問題などにも、貧困は影響しているよね。

ホープ ユヌス氏は「貧困は運命をコントロールしようとするあらゆるものを人々から奪うため、人権の究極の否定になる」(『貧困のない世界を創る』猪熊弘子訳、早川書房)と述べているよ。
これは大切な視点だね。貧困は人間から、幸福になるチャンスどころか、生きる希望をも奪ってしまうことが、根本的な問題なんだよ。

ミライ 当然ながら具体的な政策や取り組みも一層求められるけれど、一人一人の"心の変革"も大切だよね。

◇平和を願う心
ホープ ここで、釈尊の出家の動機とされる「四門遊観」の説話を学ぼう。
——王族として裕福な暮らしをしていた釈尊が、城門から出た時に目にしたのは、病や老いを抱えて苦悩する人々や、道端で亡くなっている人の姿だったんだ。釈尊は、人は誰しも生老病死の苦しみから逃れられないことを感じたんだよ。
池田先生は、多くの人が生老病死の苦しみを"今の自分とは関係がない"と捉えて、苦悩する人々を忌み嫌うことに、釈尊は胸を痛めたのではないかと、鋭く考察されたんだ。

ミライ 釈尊の慈悲が感じられる話だね。

ホープ 先生は続けて、次のように語られているよ。
「釈尊が洞察した、老いや病や死を自分に関係がないものとして厭い、苦しみを抱える人に冷たく接してしまう心理——。それはまた、貧困や飢餓や紛争で苦しんでいる人々を、自分が直面する問題ではないからと意識の外に置いてしまう心理と、底流において結びついているのではないかと思えてなりません」(第44回「SGIの日」記念提言)

ミライ 世界で何が起こっているのか、人々がどのように苦しんでいるのか、自分から知る努力をしないといけないね。つらい現実から目を背けたままだと、"自分さえ良ければ……"といったエゴイズムに陥ってしまいかねないんだね。

ホープ 日蓮大聖人は、「自身の安心を考えるなら、あなたはまず社会全体の静穏を祈ることが必要ではないのか」(御書31ページ、通解)と、自分の安らぎのみを願うのではなく、民衆が生活を営む基盤である社会の安定を呼び掛けられているよ。

ミライ 社会を離れて、仏法はないんだね。

ホープ その通りだよ! 「自分だけの幸福もなければ、他人だけの不幸もない」との先生の言葉を心に刻んで、世界の平和と安定を願う"心"を一人一人の胸中に確立していくのが仏法者の生き方なんだよ。世界の安穏を祈る心は、現実を直視する勇気となり、そこから解決への「行動の一歩」が生まれるはずだよ。

◇御文
『汝須く一身の安堵を思わば先ず四表の静謐を祷らん者か』(立正安国論、31ページ)

◇メモ
日蓮大聖人が、民衆の幸福と社会全体の静穏、世界平和を願われ、認められたのが「立正安国論」です。
その中で、民衆が生きる基盤となる社会の安穏を祈ることを教えられています。
そこには、自分だけの幸福や安全も、他人だけの不幸や危険もないという仏法の哲理が輝いています。
混迷の時代を変革するために、「自他共の幸福」を願うのが仏法者の姿勢なのです。

[コラム:"いま"を知る]誰も置き去りにしない
ある大乗仏典には、勝鬘夫人という女性が、釈尊に誓いを述べる場面が描かれている。「私は、孤独な人、不当に拘禁され自由を奪われている人、病気に悩む人、災難に苦しむ人、貧困の人を見たならば、決して見捨てません。必ず、その人々を安穏にし、豊かにしていきます」。彼女は生涯、苦悩にあえぐ人のために、行動し、誓願を貫いた。
池田先生は「国連を支援することは、勝鬘夫人に象徴される菩薩道的生き方の一つの帰結」と述べている。国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の基本理念は、「誰も置き去りにしない」。国家の枠を超えた一人の「人間」への温かなまなざしは、大乗仏教と深く共鳴している。
国連は、人間の尊厳を脅かす紛争や飢餓など、地球規模の課題を解決するために創設された。生命尊厳の妙法を持つ私たちは、国連を中心とした市民社会の連帯を広げるべく、これからも草の根の活動を推進していく。