「題目で破れぬ壁はない」
これが風雪を越えてきた
多宝の同志の確信だ。
妙法の大先輩と共に
生涯青春の心で進もう!
大白牛車御消息 P1584
『法性の空に自在にとびゆく車をこそ大白牛車とは申すなれ、我より後に来り給はん人人は此の車にめされて霊山へ御出で有るべく候、日蓮も同じ車に乗りて御迎いにまかり向ふべく候』
【通解】
仏界の空に自在に飛びゆく車を、大白牛車というのである。私より後に来られる人々は、この車に乗せられて霊山浄土へおいでになることであろう。そのときは日蓮も同じ車に乗って、必ずお迎えに向かおう。
名字の言 "目に見えない部分"を大切にする 2021年2月5日
清掃のコツは"下から見る"こと——5年連続「世界一清潔な空港」に選ばれた羽田空港で、清掃責任者を担う新津春子さんは言う。蛇口のノズル、便器の縁、テーブルの裏……。しゃがんでのぞき込み、汚れを発見する▼目に付く汚れを落とせば十分、ではない。新津さんは「目に見えない部分も含め、使う人の立場になって考える」(『清掃はやさしさ』ポプラ社)と。思いやりの精神に基づく目線が世界一の偉業を支えている▼岡山県のある婦人部員は、母の誕生日にプレゼントを贈るのが恒例だった。「今年は何が欲しい?」と尋ねると、「靴が欲しいわ」と一言▼"去年も、その前も買ったのに"と不思議に思ったが、自分が学会活動に励むようになって気付いたという。毎日のように訪問・激励に歩くと、短期間で靴底はすり減る。「普段は見えない靴の裏から、母の信心の偉大さを感じました」。婦人は今、母の心を携え同志宅を訪ねる▼何が欲しいかと聞かれ、自分の楽しみ以上に広布のためを考える。誰が見ていなくとも、自らの足でコツコツと地域を歩く。こうした無名の母ありて、学会は世界192カ国・地域に広がった。その功労を知り、探し出してでもたたえる——ここに創価の魂はある。真実は表面を見るだけでは分からない。(誌)
寸鉄 2021年2月5日
宗教は平和建設の原動力—恩師。"立正安世界"が師弟の誓い。団結第一で
白馬のなくは我等が南無妙法蓮華経のこえ—御書祈り清々しく一日を出発
楽観主義の秘訣、一つは"人と比較しない"こと。わが生命を輝かす信心だ
SDGsは子が未来の夢描く好機に—識者。皆が世界の一員。共に学ぼう
幻覚成分強めた液状大麻の押収急増。健やかな若者蝕む魔物。甘く見るな
〈社説〉 2021・2・5 「無冠の友」に最大の感謝
◇厳寒の中、広布に駆ける英姿
暦の上では立春を過ぎたが、いまだ寒い日もある。例年、1月下旬から2月上旬は、多くの地域で年間の最低気温を記録する。今年の冬は積雪量が多い地域もあり、聖教新聞を日々配達する「無冠の友」の労苦はひとしおだ。
「無冠の友」の朝は早い。多くの人がまだ眠りについている時間、暗いうちから起き出して、息をはずませ配達してくださる。誰が見ているわけでもない。広布の情熱を燃やし、朗らかに勇んで走る姿の、何と尊貴なことか。フランスの哲学者アランは「人を益するわざというのはみな、それ自身美しい、また人間の顔を美しくするものだ」とつづっている(『幸福論』、神谷幹夫訳)。
配達には、地域ごとの状況に応じ、さまざまな労苦がある。配達先が一軒一軒離れた山間地もあれば、エレベーターがなく階段を何度も上り下りする団地もある。階段が凍結しているときなど、段を踏み外したりしないように一歩一歩踏み締めるなど、細心の注意が必要だ。また、除雪車が入れない場所を、雪をかき分けながら届けるケースもある。船便で到着する聖教新聞を待って配達する離島の「無冠の友」もいる。
しかし皆、それらを自身の人間錬磨の舞台として、あるいは使命に走る喜びをかみ締めて、配達の歩みを重ねている。
東日本大震災で被災した宮城県の婦人部メンバーは、その翌年には口腔がんも患った。周囲の温かい励ましに奮起して祈りを重ね、手術は成功。感謝の思いで「無冠の友」になった。現在、病も寛解となり、地区婦人部長として広布の第一線に立つ。
聖教新聞は、こうした幾重もの希望と勝利のドラマを生きる方々によって届けられている。
池田先生は過日、「無冠の友」へのメッセージで、その英姿を最大に称賛した。
「私には、真っ先に無冠の友の皆さんの生き生きとした足取り、爽やかな挨拶が胸に浮かんできます。その姿が地域に幸の風を運びます。信心の確信と喜びが、仏法を大きく広げるのです」
聖教新聞には友人読者から「多くの方々が家庭や仕事、健康の面で大きなアクシデントを抱えた時、一生懸命に唱題を重ねて苦難を乗り越えていること。これこそが信仰の真髄なのだと感じました」など共感の声が寄せられている。各界の識者も"コロナ禍における希望と良識の言論"等と共鳴している。
本年、本紙は創刊70周年を迎える。雪にも北風にも負けず、使命の朝を駆け抜け、配達してくださる皆さまがいてこそ、聖教新聞は幸福の大道を進む同志の伴走者となりうる。「無冠の友」への感謝を込め、無事故の毎日を皆で祈っていきたい。
☆第46回SGI提言� プラスの連鎖を生む政策の推進
◇社会的保護の拡充をはじめ経済と生活の再建が急務
◇第2次大戦以降で最悪の景気後退
第三の提案は、コロナ危機からの経済と生活の立て直しに関するものです。
これまで世界経済は、通貨危機をはじめ、オイルショックや金融危機などが引き金となり、何度も景気後退に見舞われてきましたが、今回のコロナ危機はそれらをはるかに凌駕する規模の打撃をもたらしています。
世界銀行によると、第2次世界大戦以降で最悪の景気後退が生じているといいます。
そうした中で、ほとんどの業種で収益が急激に悪化し、かつてないほど多くの人々が一斉に仕事を失ったり、所得の大幅な減少を強いられたりする状況が起きています。
パンデミックの影響によって世界の労働者の約半数にあたる16億人もの人々が生計手段を著しく破壊された恐れがあると、国際労働機関(ILO)が警鐘を鳴らすほど、経済危機は深刻さを増しているのです。
いくつかの国では、人々の生活を支えるための臨時給付などの緊急対策が打ち出され、昨年9月のG20(主要20カ国)の労働雇用大臣会合でも、「全ての労働者とその家族を支える強固な社会的保護制度の必要性が高まっている」との共通認識が示されました。
社会的保護とは、一人一人の生涯にわたって、貧困や病気や失業などで厳しい状況に陥った時に、その影響を軽減させるための政策や取り組みを指すもので、「世界人権宣言」でも謳われている人権の一つです。
かつて2008年に世界金融危機が起こり、多くの人々が雇用や保健や教育などの面で打撃を受けた時に、国連が2009年に立ち上げたのが、生活基盤の保障の確保を目指す「社会的保護の床」の取り組みでした。
私は2013年の提言で、この取り組みを強く支持した上で、特に若者たちの仕事を巡る状況が厳しさを増していることを踏まえ、次のように呼び掛けたことがあります。
「若者たちが希望を持てない社会に、持続可能な未来など描けるはずもなく、人権文化を育む気風が根づくこともありません。ゆえに、『社会的保護の床』の確保こそ、持続可能性と人権文化の大前提であるとの意識で取り組むべきだと訴えたい」と。
そして、当時、国連で検討が進められていたSDGsの目標の中に、「極度の貧困に苦しむ人々が尊厳ある生を取り戻すための『社会的保護の床』を全ての国で整備すること」を盛り込むよう、提唱しました。
これと相通じる趣旨の内容はSDGsでも掲げられるようになりましたが、世界金融危機の時よりも格段に深刻な状況が広がり、これまで安定した生活を送っていた人たちも含め、大勢の人々が突然の困窮にさらされる中、「社会的保護の床」を整備することが急務となっていると思えてなりません。
マルチハザードの観点に立った政策
その重要性は、37カ国で構成される経済協力開発機構(OECD)においても共通認識となってきています。
昨年5月に発表された「コロナウイルス危機下の生活支援」と題する報告では、多数の労働者とその家族が貯蓄を取り崩すなどの対応を迫られており、現在と将来の健康や生活が危険にさらされているとして、次のような認識が示されていました。
「前例のない規模の危機であることから、短期的な課題に留まるものではなく、その対応には、今後何カ月、場合によっては何年にも及ぶ、持続的な政策努力が求められるであろう。支援プログラムを可能な限り効果的かつ持続可能なものとするためにはどうすればよいか、熟慮が求められる」(OECDのウェブサイト)と。
歴史を遡れば、OECDは、戦後の混迷が続くヨーロッパ諸国の復興を支援するために、アメリカが1948年に始めた「マーシャル・プラン」の受け入れ体制を整備する目的で設立された組織が母体となったものでした。
現在では、各国の数多くの専門家を擁する世界最大の「シンク・タンク」にまで発展し、その特色の一つは、各国の取り組みを相互審査する活動などを通じて政策の"世界標準"を醸成していく点にあります。
特に近年は、活動を通してまとめた政策提言を具体的な実行に移すことが重視されており、実行を意味する英語の"ドゥー(do)"を加える形で、OECDは自らを「シンク・ドゥー・タンク」と位置付けるようになっています。
◇環境の保護を重視した挑戦で新たな雇用機会を創出
そこで私は、OECDの加盟国が、社会的保護に関するSDGsの目標を牽引する役割を担うとともに、コロナ危機で打撃を受けた経済と生活を再建するための政策について"世界標準"を共に導き出しながら、率先して実行していくことを期待したい。
例えば、「グリーン経済への積極的な移行による雇用機会の創出と産業の育成」をはじめ、「社会的保護制度の拡充のために軍事費を削減して転用すること」などが、一つの方向性として考えられます。
また、社会のレジリエンスを強める方策として、「防災や生態系保護の推進による持続可能な地域づくり」や「医療体制への継続的な支援と、介護などのケア分野での雇用環境の整備」など、意欲的な政策を進めることで世界をリードしていく意義は大きいと思うのです。
ここで政策の例示として、社会的保護の拡充に関するものだけでなく、気候変動や環境保全、防災や保健福祉といった分野に言及したのは、故なきことではありません。
現代における危機は、国連防災機関が強調するように、さまざまな脅威や課題に包括的かつ同時に対処していく「マルチハザード」の視座に立つことが、欠かせなくなっているからです。
昨年9月に行われた国連の生物多様性サミットでも、気候変動問題の悪化や、自然環境の破壊が進んでいけば、新型コロナに続く形で今後も新たな感染症が発生する恐れがあるとの認識が示されました。
このマイナスの連鎖に対し、「マルチハザード」の視座に立った取り組みを進めて、プラスの連鎖を生み出す必要があります。
つまり、気候変動への取り組みは、新たな感染症を防止するための対策ともなり、感染症対策を強化した社会は、防災の面でも強靱さを備えた社会となる。また、生態系の保全を基盤にした防災・減災に努めることは、気候変動問題に対処する力になるといったように、多くの課題を"プラスの連関"に転じることが求められているのです。
◇アフリカで進む長大な緑地の構築
コロナ危機からの経済と生活の再建を目指す上で大切になるのは、社会的保護の拡充を柱としながら、さまざまな脅威に対するレジリエンスの強化を図り、「誰もが安心して暮らすことのできる社会」を各国が共に築き上げることではないでしょうか。
一つ一つの危機も、個別に対処するのではなく、包括的に対処する中で、新しい世界の可能性を共に切り開くチャンスに変えていくことができると、私は強調したいのです。
国連のグテーレス事務総長も、生物多様性サミットでこう述べていました。
「コロナ後の復興計画と、より幅広い開発計画において、自然環境に根差した解決策を組み入れる必要があります。世界の生物多様性を保全することで、今、早急に必要とされている雇用と経済成長を生み出すことができるのです。世界経済フォーラムは、自然関連のビジネスの拡大によって、2030年までに1億9100万人の雇用創出が見込まれるとの見解を示しました。アフリカでの『グレート・グリーン・ウォール』の計画だけでも、33万5000人の雇用が創出されています」と。
事務総長が言及した「グレート・グリーン・ウォール」とは、サハラ砂漠の南縁部(サヘル地域)を横断する形で、長さ8000キロ、幅15キロにわたって在来植物を植樹し、周辺に農地をつくることで長大な緑の帯を生み出す計画です。
アフリカ連合の主導によって2007年から進められてきたもので、これまで2000万ヘクタールの荒廃した土地が回復し、植林や作物の栽培に関わる雇用が増えたほか、砂漠化が引き起こしてきた慢性的な食糧不足が改善されて、人々の健康と生活はより安定した状態になってきました。
この取り組みは、SDGsを構成する17の分野の目標のうち、15の分野に及ぶ目標に貢献しており、サヘル地域のレジリエンスを強めるとともに、地域のすべての人々が恩恵を受けられる経済成長につながることが期待されています。
計画に参加するアフリカの国々は、2030年までに1億ヘクタールに及ぶ「グレート・グリーン・ウォール」を構築するというビジョンを共有し、コロナ危機からの経済回復をはじめ、SDGsの達成や温室効果ガスの排出量を削減するパリ協定の推進を図ろうとしているのです。そこには、"サヘル地域のような困難な場所でも、自然への働きかけによって逆境を乗り越え、次世代のためにより良い世界を築くことができる"との思いが込められています。
これはアフリカでの事例ですが、OECDの加盟国をはじめとする国々でも、コロナ危機の克服を目指す中で意欲的な政策を進めることが大切ではないでしょうか。
世界経済フォーラムの予測では、自然環境重視型の社会経済システムへの転換を進めていけば、食料や土地活用の分野で生み出すことが可能とされる1億9100万人の雇用に加えて、資源効率が高いインフラの整備や、再生可能エネルギーの導入拡大などの対応を進めることで、2030年までに全体で約4億人の雇用を創出できるとの青写真を示しています。
OECDの加盟国が、主要パートナーであるブラジル、インド、インドネシア、中国、南アフリカ共和国などの国々と連携して、世界経済の立て直しの牽引力となると同時に、「誰もが安心して暮らすことのできる社会」を地球全体に広げる役割を担うことを、私は強く期待するのです。
◇市民社会の力で行動の10年を推進
国連がSDGsの達成に向けて昨年から開始した「行動の10年」は、コロナ危機の発生によって前途多難なものとなりました。
しかしアフリカの人々が連帯して荒れ地を農地に変える努力を続け、地球上に"新しい緑の大地の帯"を生み出そうとしているように、人間には直面する危機を「価値創造」の糧へと転じる力が具わっています。
私ども創価学会が、その名に掲げる「創価」の文字にも、こうした価値創造の力を発揮する中で「自他共の幸福」を基軸にした社会を築いていく精神が込められています。
牧口常三郎初代会長は、その価値創造のダイナミズムを、仏法の精髄である法華経の譬喩を踏まえて、「泥中の蓮」と表現していました。
蓮華が周囲の泥土に染まることなく、泥土を成長の糧にしながら、美しく咲いていくように、どれだけ時代の混迷が深まろうとも、その混迷によって、自分自身の生き方や信念を埋もれさせない。
自らを取り巻く環境を"使命の舞台"に変えて、人間の生命に具わる限りない「価値創造」の力を開花させながら、社会に希望と安心を広げる存在となっていく——。
この「創価」という言葉を師弟の対話の中で生み出した、牧口初代会長と戸田第2代会長が源流となり、1930年から始まった「自他共の幸福」を目指す民衆運動は、今や192カ国・地域にまで広がりました。
国連がSDGsの達成期限として掲げ、「行動の10年」のゴールとなっている2030年は、私ども創価学会にとっても創立100周年にあたります。
地球的な課題の解決を目指して、志を同じくする人々や諸団体と深めてきた連携を礎としながら、2030年に向けてSDGsの達成を市民社会の側から後押しし、「平和と人道の地球社会」を築くための挑戦を、さらに力強く展開していきたいと思います。