新聞休刊日
妙密上人御消息 P1241
『二人三人十人百人一国二国六十六箇国已に島二にも及びぬらん、今は謗ぜし人人も唱へ給うらん』
◇人生の座標
苦労さえも美しさに育てるような生き方とは何か。それは世界でたった一つしかない自分の人生を愛おしむ。一日一日を丁寧に生き、一生を自分らしく仕上げていく。そういう"自分を大切にし、自分に忠実に生きる"ことではないか。その人にはグチがないし、いつまでも若々しい"心の張り"がある。
☆未来の翼〜世界が君を待っている〜 第7回 カナダの滝�
大地を揺るがす轟然たる水音が、体の芯まで響いてきます。
"世界三大瀑布(滝)"の一つ、カナダ・トロント近郊のナイアガラの滝の迫力は圧倒的です。悠然と流れる紺碧の水が一気に落下し、豪快に砕けると、真っ白い飛沫が空へ舞い上がり、光を浴びていくつもの虹を描きます。
地球の大いなる生命力の交響曲が、そこにはありました。
「滝の如く 激しく
滝の如く 撓まず
滝の如く 恐れず
滝の如く 朗らかに
滝の如く 堂々と」
こう私は綴ったことがあります。その滝の大王者が、カナダの誇るナイアガラの滝なのです。
滝を登り切った魚は、竜になる——この「竜門の滝」という中国の故事を引いて、日蓮大聖人が励ましを送ったのが、未来部の皆さんの大先輩である南条時光です。
魚が滝を登るには、激しい水の抵抗に打ち勝たねばならない。鳥や漁師からも狙われる。それらを勝ち越え、登り切ってこそ、竜となって、天まで昇ることができる。
人もまた、何があっても、自分自身の決勝点を見失うことなく、挑戦し抜いた人が勝利者である。
ゆえに大聖人は、そのお手紙の中で、呼びかけられました。
『願くは我が弟子等・大願ををこせ』(P1561、「上野殿御返事」)と。
わが弟子よ、大いなる目的に生きよ!——時光が7歳の時に出会って以来、その成長を楽しみに見守ってこられた大聖人が、広宣流布を託されたのです。この時、時光は満20歳でした。
それは「熱原の法難」という、入信間もない農民信徒たちが迫害された大難の渦中のことでした。その時に、大聖人が心から信頼され、期待を寄せられたのは、青年です。今でいえば、未来部の出身者なのです。
広宣流布を決するのは、若き後継の人材の流れです。末法万年尽未来際へ、世界の平和と人類の幸福を確立する戦いだからです。
思えば、ナイアガラの滝も、1万2000年という長い時間をかけ、形成されてきたといいます。
「未来」は「今」決まります。
私は、広布の全てを、信頼する未来部の君たちに託します。
仏法では、『心清ければ土も清し』(P384、「一生成仏抄」)と説かれます。
大いなる国・カナダは、心美しき人々が住む、美しき国土である——私はそう思ってきました。
面積は、ロシアに次いで世界で2番目に大きい。神秘的な森と湖、氷河が織り成す大地は、国旗に「メープル・リーフ(カエデの葉)」が描かれている通り、秋になると紅葉の一大絵巻に染め上げられます。極北地方では、夜空を彩るオーロラも見られます。
有名な『赤毛のアン』の物語の舞台であり、「世界で最も美しい島」と讃えられるプリンス・エドワード島も、この国にあります。
ユーラシア大陸から渡ってきた先住民が住む大地に、やがてヨーロッパ人が移り住んだこの国は、多くの民族、多くの文化、多くの言語が共生しています。
近年は、世界の各地で紛争や動乱があるたびに、そこから逃れてきた人々を迎え入れてきた「人類の安全地帯」なのです。多くの国と仲良くして国際協力にも積極的な役割を果たし、平和に貢献しています。
現在は、実に200を超える民族が暮らし、新聞・雑誌などは40カ国語以上で発行されています。民族や人種の違いを尊重し、平等に国づくりに参加できる「多文化主義」を世界で初めて政策に掲げた国として尊敬されています。
それは、私の恩師・戸田城聖先生が示された「地球民族主義」の理想へ進む国でもあったのです。
世界から多くの人々を受け入れてきたカナダはまた、多くの偉人を世界に送り出してきました。
その一人が、私の敬愛する友人、ジョン・ケネス・ガルブレイス博士です。長年、ハーバード大学で教壇に立った博士は、このアメリカを代表する名門大学の歴史のなかで最も著名な学者と讃えられる人物です。
博士は、ルーズベルト政権やケネディ政権の頭脳として活躍され、20世紀を代表する経済学者として広く知られています。
私のハーバード大学での2度目の講演(1993年9月)の際には、講評もしてくださいました。〈博士は講演を「私たちが希望し、」願望している『平和実現への道』を示した」と述べました〉
97歳で逝去されるまで、若々しく人類の未来のために尽くされました。2メートルを超える長身の博士は、まさしく「知の巨人」でした。
博士の生き方を決めたのは、カナダで過ごした少年時代に見た、お父さんの後ろ姿でした。お父さんは、熱心に農業をやりながら、学校の先生や会社の経営、町や郡の会計の仕事もしました。政治にもかかわり、演説もしました。父の手伝いをよくした博士は、世の中のさまざまな仕事に興味を持つようになりました。
博士と日本でお会いした際、私は博士が何故、ご高齢にもかかわらず、これだけ元気に活動できるのかを聞いたことがあります。
博士は、こう答えられました。
「何よりも大事なことは、朝起きた時に、今日一日の計画が決まっていない、考えていない、といったことがないようにすることです」
朝起きて、今日はこれをしよう、あれを学ぼうとワクワクした気持ちで、一日一日を快活に生きました。
その日々の積み重ねが、博士を大学者へと育んでいったのです。
皆さんも一日に一つ、何か新しいことに挑戦してみよう。自分らしい一歩前進で、かまわないよ。
「いつもより5分長く、勉強する」「良書に挑んでみる」「あまり話したことのない友だちに声をかける」「お母さんの手伝いをする」など、何でもいいんだ。ワクワクするようなことを考えて、勇気を出して実行してみよう。
月々日々に、チャレンジした分だけ、自分が大きくなります。
私は、カナダの名門モントリオール大学のがん研究の第一人者であるシマー博士(元学長)、生命倫理の大家であるブルジョ博士(同大学終身教授)と、てい談集(『健康と人生——生老病死を語る』)を発刊しました。
そのなかで、「健康」の定義についても語り合いました。
——健康とは、ただ単に「どこにも病気がない」ということではない。例えば、自転車が走っているかぎり倒れないように、常に躍動して、とどまることがない。何かに挑戦し、創造していく生き方こそ健康である。常に、「新たな探究」の生命が健康な人生をつくっていくのだ、と。
朝のはつらつとした勤行から、創造的な一日への挑戦を開始する私たちほど、健康な青春、健康な人生はありません。