芸術は心を豊かにする。
書籍・絵画・音楽など
古今東西の名作に親しむ
ひとときを作ろう。
精神に潤いと触発を!
四条金吾殿御返事 P1192
『はげみをなして強盛に信力をいだし給うべし、すぎし存命不思議とおもはせ給へ、なにの兵法よりも法華経の兵法をもちひ給うべし』
【通解】
いっそう自分自身を励まして、強盛な信力を出していきなさい。先日、命を永らえたのは、まったく御本尊の不思議な功力であると思いなさい。どのような兵法よりも、法華経の兵法を用いていきなさい。
〈寸鉄〉 2019年8月2日
全員が責任者の覚悟で—恩師。青年よ広布の責任担う心意気で戦いに挑戦
平均寿命、平成30年間で5歳長く。生きがい光る多宝会は長寿社会の希望
食べ残し等の「食品ロス」対策広がる。家庭で工夫重ねれば食費の軽減にも
「水の週間」。人体の6割、地球表面の7割が水と。資源の貴さを考える好機
飲酒の場が増える季節。飲んだら乗らない!小さな油断排して絶対無事故
☆人生の価値はここに 創価大学同窓の友を訪ねて 第2回 岩手
◇成すべきことを成す
詩人の高村光太郎は「岩手の人沈深牛の如し」と詠んだ。
冷静沈着、寡黙でおとなしいさまは牛のようだ——と。周囲がどうであろうと決して慌てふためくことはない。最後には、成すべきことを成し遂げるのが岩手人であると、高村は同じ詩でたたえている(尾崎喜八編『高村光太郎詩集』彌生書房)。
簗田雅伸さん(7期、経済学部卒)は、まさにそんな人だろう。本年4月、県内に本社を持つ情報処理サービス会社の代表取締役社長に就任した。「先代は、ぐいぐいとみんなを引っ張る、スピーディーなリーダータイプ。私は、その全く正反対の人間なんです」
盛岡生まれで4人兄弟の3番目。両親は家計の苦しさを言葉に出さず、快く創価大学に送り出してくれた。卒業後、「郷土で実証を示そう」と誓うも、転職を繰り返す。創大同期生の活躍の様子が次々と耳に入ってきたが右往左往したことはなく、むしろ大きな励みになったという。28歳の時に面接を受けた職場が、現在務める会社である。
コンピューターは全くの門外漢。だが任された仕事は「営業」だった。企業へのパソコンの普及があまり進んでいない時代である。業務システム構築の必要性を伝えることは困難を極めた。そこで生きたのは、創大時代、さまざまな出身地の学友たちと対話を重ねた経験だった。知識を蓄えた上で、どうすれば分かりやすく伝えられるか、顧客に喜んでもらえるかを思索した。その視点から出発すると、顧客のニーズを自然とつかめるようになった。
一歩ずつ実績を重ね、信頼を広げていくうちに、気付けば「還暦を迎えていました」。簗田さんは亥年の「年男」。牛のような堅実さを持つ一方、これと決めたら一瀉千里に走り抜く猪突猛進タイプでもある。デジタル時代の今だからこそ「人間の心を大切に」との信念は、決してブレない。
社員を尊敬し、その成長と幸福に尽くす。リーダーとは皆に献身する人——創大創立者・池田先生から学んだ「将軍学」だ。舵取りを任された会社は、顧客からの高い評価を得て発展を続けている。
◆◇◆
郷里の岩手に弁護士事務所を設けることは、創大在学時代からの念願だった。小野寺泰明さん(35期、法学部卒)がその思いを一段と強くしたのは、東日本大震災の時である。
当時は、創大法科大学院生として司法試験に向けた勉強の真っ最中。盛岡の実家に被害はなかったが、テレビに映る岩手の惨状を見るたび気がはやった。「早く古里に尽くす弁護士に」と。
2012年9月、試験に合格。仙台の法律事務所で経験を積み、14年7月に盛岡で独立を果たす。
甚大な津波被害のあった宮古市や大槌町に毎月赴いて、被災者の法律相談に乗った。沿岸部の弁護士だけでは人数が足りない状況だったのである。被災した自宅と再建した自宅の二重ローン、所有者不明の土地を巡る問題、遺産相続……。相談者の表情には、さまざまな感情が色濃く影を落としていた。
応対する小野寺さんも、葛藤を抱いていた。「震災発生時、岩手にいなかった自分に、この方々の気持ちが分かるのだろうか」と。そのたびに創立者が折々に語った「だれにも、その人にしか果たせない使命があります」との言葉を思い起こした。
目の前の被災者に寄り添える弁護士は、自分しかいない——小野寺さんは「その責任と使命を果たそう」と覚悟を決めた。相手の心の声に耳を傾け、その苦悩を少しでも分かち合おうと努めるなかで、次第に、相談者の安堵の笑顔が増えていった。
一人を大切に——その姿勢は今も変わらない。事務所に相談に来ること自体にハードルの高さを感じる高齢者などのために、自ら足を運ぶことも少なくない。事務作業を担う妻・明美さん(33期、教育学部卒)のサポートがあるからこそ、できることでもある。
課題は多い。悩みも尽きない。だが「自分には創立者との誓いがある」。
創大進学を志望する子どもたちへの励ましにも尽くす日々。後輩たちのために道を開くことで、郷里に恩返しをと決めている。
生まれも育ちも東京・新宿区。「ビルに囲まれた生活だったのが、今は豊かな自然に癒やされる毎日」と、鈴木彰真さん(32期、工学部卒)はほほ笑む。工学博士号を持つ講師として岩手県内の大学で教壇に立つ。
小学校から大学院まで創価一貫教育。高校時代、博士として活躍する卒業生の存在を知り、「自分も世界に貢献できる博士に」との夢を抱く。
創大進学後、勉学にいそしむ傍ら、パイオニア吹奏楽団の活動に青春の全てをぶつけた。全国大会では銀賞を受賞。何よりの思い出は、海外の来客を迎えた記念行事で演奏の機会に恵まれたことだという。
舞台下のオーケストラピットから、創立者の振る舞いを目の当たりにした。世界一流の識者の心をつかんで離さない人格と知性の輝き、学生をわが子以上に愛してやまない慈父のような温かさ、その全てが「最高の人間教育でした」。
大学院修了後、2011年に創価大学の博士号を取得。創大工学部で助教を務める。13年秋から現職に。壁にぶつかるたび、「英知を磨くは何のため」との指針を確認した。社会の役に立ちたい。家族、教授、学友、そして創立者の恩に報いたい——必死の思いと努力が実を結び始めた。
現在、自動車事故防止を支援するため、シートの下部を振動させることで事故の危険がどの方向から迫ってくるかを運転手に知らせるシステムを構築中だ。
また、一般的なガイドブックやインターネットサイトでは見つけづらい、マイナーなローカルフードを検索するシステムの開発にも携わる。「例えば、岩手県には『ひっつみ』(小麦粉を用いた汁物の郷土料理)等、おいしいものがいっぱいあるんです」。こうした研究を通して、岩手に尽くしたいと願う。
先月30日から今月4日には、イタリア・ローマで行われた国際学会で研究成果を発表した。少年時代からの夢の実現へ、英知に磨きをかける日々は続く。