御聖訓「ほむれば
弥功徳まさる」。
信心の偉大さを
堂々と語ろう!
そこに尊き福徳は輝く。
大悪大善御書 P1300
『大悪をこれば大善きたる、すでに大謗法国にあり大正法必ずひろまるべし、各各なにをかなげかせ給うべき、迦葉尊者にあらずともまいをもまいぬべし、舎利弗にあらねども立つてをどりぬべし』
◇希望の明日へ
高貴に謳いあげた優れた詩は、時の風化を超え、はるかな未来へと、謳い継がれ、伝えられていく。物体は、時間の経過とともに消え去る運命にあるが、麗しき"心の世界"は、永遠に変わることなく、心の美の旋律を奏でていく。詩が永遠であれば、その詩に謳われた人生、人間、歴史も、みな永遠であろう。
昭63・7・10
☆未来の翼〜世界が君を待っている〜第1回 ロサンゼルスの道
それは、どこまでも続く、夢と希望の道です。
はるか太平洋の彼方から、快活に押し寄せる白波。宇宙の果てまで突き抜けるような青空──。
人々が憩うビーチも、緑と茶色の山々も、さっそうと駆け抜ける車の車体も、全てが明るく照り輝いています。
この太陽の讃歌にあふれる道は、私がアメリカ西海岸のカリフォルニア州ロサンゼルスを訪れた際に、いつも通る道です。潮風を切って走る車の中で、私は思わずカメラのシャッターを押しました。
私にとってアメリカは、恩師・戸田城聖先生に託された「夢」の第一歩をしるした国です(1960年10月)。以来、54カ国・地域を訪問し、友と語り、平和の種を蒔き続けてきました。
恩師には、壮大で崇高な「夢」がありました。それは、「この世から 『悲惨』 の二字をなくす」という、「世界広宣流布」の夢です。
いつの旅でも、どこの国を訪れても、私の胸には、恩師の言葉が響いていました。
「大作、世界へ行くんだ。私に代わって!」
私の世界への旅は、師の夢をかなえる「後継の旅」です。世界広布の夢を広げる「平和の旅」です。
そして今、君と私の夢を開く「新たな師弟の旅」が始まります。
さあ、一緒に旅に出よう! 心に大きな「未来の翼」を広げて!
「夢を描くこと」そして「夢に挑戦すること」は、人間ならではの権利であり、なかんずく青年ならではの特権でしょう。
ロサンゼルスは、人々が夢を追って集い来た自由の天地です。
カリフォルニア州には、「ゴールデン・ステート(黄金の州)」という呼び名もあります。かつて、この地で金が採れたため、多くの人が一気に入植し、街を発展させていったからです。「カリフォルニアの過去がアメリカの未来だ」とも言われています。
今も昔も、「フロンティア・スピリット(開拓者精神)」にあふれる人たちが住む「夢の舞台」——世界都市・ロサンゼルスは、まさにその中心です。
ロサンゼルスを、私はこれまで何度も訪れてきました。この地は私にとって「黄金の人材」が輝きわたる希望の都なのです。
40年前の春、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で講演をした時のことを、私は懐かしく思い起こします。
1974年の4月1日。時差のある日本では、戸田先生の祥月命日である4月2日のことでした。
青春時代、私は、お仕えする戸田先生の事業を支えるため、大学に行くことを断念しました。しかし、先生は、「最優秀の教育を授けたい」と、最初は日曜日ごと、やがて平日の朝も使って、万般の学問の個人教授を続けてくださったのです。
この「戸田大学」の卒業生の誇りも高く、師から教えていただいた生命尊厳の哲理を、若き知性に伝えたい──講演は、師匠の夢の実現であり、師匠を宣揚する言論の戦いでした。
私は、仏法の生命観を通して、「21世紀を生命の世紀に」と提唱しました。
進取の気性に富む英才たちは、私の講演を実に真剣に聴いてくれました。終了後には、多くの学生が壇上の私の前に駆け寄ってきました。
仏法の人間主義の哲学を、世界の若き知性が求めている。この姿を戸田先生がご覧になったら、どれほど喜ばれるだろうか──私は、汗を拭うのも忘れ、一人また一人と固い握手を交わしました。
この時を第1回として、恩師の心を携えながら、私が、海外の大学・学術機関から招へいを受けて行った講演は、32回を数えます。
「人生というのは、夢を見るためにあるのよ。それをつかむ勇気と意志を持っているかどうかなのよ!」
これは、私の忘れ得ぬ友人である、ロサンゼルスのトム・ブラッドレー市長のお母さんの言葉です。
ブラッドレー市長も、私が講演したUCLAに学んだ一人です。全米屈指の大都市ロサンゼルスで、アフリカ系アメリカ人として初めて市長になった方です。
最初の出会いは、講演の翌年の1975年の1月。高層ビル群を一望する市庁舎でした。
部屋に入ると、長身のブラッドレー市長が、満面の笑みで迎えてくださいました。
穏やかな語り口。飾らない率直さ。どこまでも謙虚な立ち振る舞いに、幾多の苦難に磨き抜かれた人格が輝いていました。
ブラッドレー市長の祖父は、かつて奴隷の境遇にあった方です。父親は貧しい小作農で、その息子である市長も、小さい時から綿花畑で働かねばなりませんでした。市長が未来部の皆さんと同じ年代のころは、まだまだ人種差別が色濃く残っていました。
大学進学は夢のまた夢でした。市長は学校の教員に、「大学など行けるはずがない、仕事をした方がいい」と言われたそうです。
それでも、あきらめませんでした。「人生は夢を見るためにある」──お母さんの言葉が、市長を支える信念となっていたのです。
努力に努力を重ねて、ついにUCLAへの進学を果たしました。その後、21年間、ロサンゼルス警察で働きます。さらに市議会議員を務め、市長に立候補して、2度目の挑戦で当選したのです。
市長は、もともと警察官になることを希望していたわけではありません。周囲の勧めもあり、とにかく試験を受けてみたそうです。そこから道が開かれました。
目の前の課題に、一生懸命、取り組む。 "何事も、とにかくやってみよう" と挑戦する。たとえ夢がはっきりと見えていなくたって、かまいません。
努力は絶対、無駄にはならない。ベストを尽くす一歩一歩が、必ず夢に向かって前進する栄光の道となるのです。
その道の途中では、迷うこともあるでしょう。でも、焦る必要はありません。遠回りしたとしても、新しい発見をするチャンスととらえて、周りの景色を楽しめばよい。そのうちに、もっとすばらしい道が見つかったり、新たな夢の目的地が見えたりすることもある。
大事なのは、失敗を恐れない勇気を持つことです。「いつか必ず夢をかなえてみせる」という不屈の意志を持ち続けることです。
大きな夢だけが、夢ではありません。みんなが日ごろ目標にして願っていること、頑張っていることを、思い浮かべてみてごらん。
「成績を上げたい」
「部活でレギュラーになりたい」
「海外に留学したい」
「友達と仲良くなりたい」
「家族の病気が治ってほしい」
どれも、大切な「夢」です。
夢の "種" は身の回りにあふれている。だから毎日、真剣に祈って、夢を見つける努力をしよう。夢をかなえる挑戦をしよう。
皆さんが将来、ロサンゼルスを訪れる時に、まずロサンゼルス国際空港に降り立つでしょう。その国際線ターミナルの名は、「トム・ブラッドレー国際ターミナル」です。ブラッドレー市長の胸像が立っています。市長は今も変わらず、世界中の人々を、あの満面の笑みで迎えているのです。
皆さんの心にも、きっと「さあ、夢を見よう!」と呼びかけてくれるに違いありません。
アメリカ公民権運動の母ローザ・パークスさんも、私がロサンゼルスでお会いした大切な宝の友人です。
「私には夢がある」という演説で有名な指導者マーチン・ルーサー・キング博士と共に、人種差別撤廃のために戦った女性です。
何の罪もなく、ただ黒人だというだけで差別され、いじめられました。公共のバスの中でさえ、自由に座ることを許されなかった社会で、勇気に燃えて、正義の声をあげ、歴史を大きく変えたのです。
パークスさんは、未来を担う少女に、こう語りかけています。
「あなたも、自分自身を信じることによって希望の灯火(ともしび)を燃やし続けることができるのです。あなたが、自分自身と未来に対し、希望をいだき続けるならば、きっと、世界をもっと住みやすい場所にすることができるはずです」
たとえ君が、あなたが、壁に突き当たり、窮屈な思いをしていても、夢を世界に広げれば、そこに希望は生まれる。希望がある限り、夢の道は永遠に続いていきます。
世界をもっと良い場所に!──この夢に生きたパークスさんは、アメリカ創価大学(SUA)にも大きな期待を寄せ、励ましの手紙を送ってくださいました。
ロサンゼルス近郊のオレンジ郡にあるSUAは、平和のために闘う世界中の人たちの夢の結実です。各国から最優秀の若き世界市民が集い、平和への夢の大道を歩んでくれています。
私の心も、日々、この希望の光に満ちたキャンパスで向学と使命の青春に生きる学生たちと共にあります。世界中で奮闘する卒業生と共にあるのです。
これから、皆さんの中から、また皆さんの仲間から、SUAに進んでくれる英才が、たくさん出ることを、私は楽しみにしています。
青春の道は、日差しが爽やかな快晴の日もあれば、荒れ狂う嵐の日だってある。
その試練の時に、力となるのは、共に支え合って前進していく善き友の存在です。
日蓮大聖人は、『仏になるみちは善知識にはすぎず』(P1468、「三三蔵祈雨事」)と仰せになられました。
仏になる道においては、何よりも善き友の存在が重要であると説かれているのです。
大いなる夢を掲げて、善き友と励まし合って歩むならば、決して行き詰まりません。
皆さんには、未来部の担当者という、どんな時も善き味方となって、一緒に祈り、相談に乗ってくれて、真心から応援してくれる先輩方もついています。
私が青春時代に愛読した一人にアメリカの民衆詩人ホイットマンがいます。彼の詩集 『草の葉』 にある「大道の歌」には、高らかに詠われています。
「出かけよう、道はぼくらの前にある」
青春の理想へ、人生の勝利へと続く大道は、今、皆さんの目の前に開けています。
それは、果てしない理想の高みへと通ずる使命の道です。
どんなに険しい峰が立ちはだかったって、絶対に大丈夫です。
皆さんには──
可能性を無限に発揮しゆく「夢の翼」があるからです。
何ものにも負けない「希望の翼」があるからです。
そして、世界に羽ばたく「未来の翼」があるからです。